監督 ジェームズ・マーシュ
出演 フィリップ・プティ
2008年 イギリス
1974年8月7日、高さ411メートルのワールド・トレード・センターの
ツインタワー間にワイヤーを渡して、命綱なしで綱渡りを敢行した
フランスの大道芸人フィリップ・プティの偉業を称えたドキュメンタリー映画。
この綱渡りの計画は無許可で実施されたのですが、
本作は、いかに綱渡りに必要な1トンもの機材を隠密に持ち込んで
設営したのかを、当時の関係者による証言に基づく再現ドラマを中心に
構成されているので、ドキュメンタリー映画というよりも劇映画を
観ているようなスリリングな内容になっています。
クライマックスの綱渡りの実写映像が欠けている事もあって、
40年前の個人的な出来事を、今を描いて価値のあるドキュメンタリー
形式で見せるより、いっその事、劇映画にした方が良かったのでは
ないかと思いました。
本作は、911テロ事件に関する言及が一切ありませんが、
建築中のワールド・トレード・センターの実写フィルムが挿入されているので、
どうしてもあの破壊されたツインタワーの映像がオーバーラップしてしまい、
「人生はエッジを歩いてこそ価値がある」と言うフィリップの
反骨精神が、テロで傷心しているアメリカに対して奮起を
促しているようでもありました。