監督 ヤン・シュヴァンクマイエル
主演 クリスティーナ・コホウトヴァー
1988年 スイス/イギリス/,ドイツ
本作は、1989年11月にチェコスロバキアで起こった
民主化運動『ビロード革命』以前の共産党政権下で、
思想弾圧を受けて地下に潜って活動していた
反体制知識人のひとりであるシュヴァンクマイエルが、
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を基に、
3年がかりで1987年に完成させた長編処女作。
独自の実写と人形アニメを組み合わせた手法を用いて、
扉の向こうと引き出しの中に潜ませた別世界に、
チェコスロバキアの現実を投影させてみせた
シュヴァンクマイエルの思惑通りに、
私は、部屋の中で膝を抱えて窮屈そうにしている
巨大化したアリスの如く、
作品全体を支配する閉塞感に息が詰まりそうになった。
アリスの夢を見ていたのではなく、シュヴァンクマイエルの
悪夢を見せられていた事に気付いた時には時すでに遅し。
夢の中で、私の首を切ろうとはさみを持ったアリスが、
どこまでも追いかけてくる。
(2008年7月9日)