あえて言わせて頂きますと私がいる役所の世界(公務員の世界)は一般的社会平均よりも頭の良い人の比率が高いと思います。
別に官が偉くて民が下だという事ではなく、「事実」としてそうだと感じます。
本省に行ったらさらに頭の良い人が多いのかもしれません。
と言いつつ私は頭が良くありません。
むしろ「頭が悪い部類」です。
なんでもかんでもコピーを取っておく、ノートに書いておく、ささいな予定でも手帳に書く。
こうしないと全く仕事が回っていかない人間です。(2011年03月19日記事「ノートがあれば話ができる 手帳があれば予定を間違えない 」参照)
私が仕事をしていて一番最初に出会った頭の良い人は、私が公務員になって2年目の時の男性の主任でした。
あまり文書などを読まずに仕事をこなすという役人にしてはあまりいないタイプ。
と言うのも分かる人に概要を聞けばたいがいの事はその場で理解できてしまうから文書を読む必要がないようです。
勿論人間ですからミスが0だという事はありませんが、たいがいのことはできてしまう。
20%の事を説明すれば瞬時に全体の80%を理解する人でした。
直接聞いた訳ではないですが、かなり高学歴らしいです。
高学歴の人の中にはものすごく勉強して大学に入った人と才能をベースにあまり勉強せずに大学に入った人がいるようですが、その主任は後者でしょう。
現役時代に全滅して浪人して何とか東京六大学にも入ってない東京にある大学にヒーヒー言いながら入った私とは違う訳です。
その主任の仕事の仕方に批判的な目もあったようですが、私は構わないと思います。
「ガチ頭が良い」人が一般人と同じ仕事の仕方をするのは逆に非効率的だと思います。
学校で一番できの悪い子にあわせて授業をしてしまうとできの良い子の成長の可能性を妨げてしまうのと似ています。
ちなみにその主任はおそらく今の私くらいの年齢だったと思います。
今の私はヒラです。
組織はちゃんと能力に応じて出世を決めています。
悪平等社会ではありません。
世間ではどう思われているか知りませんが。
さて本題は次からです。
私が10年近く役人をやっていて面白い現象を発見しました。
性差別をする訳ではないのですが頭の良い女性職員の中に(頭の悪い私から見ると)ものすごい説明の仕方をする人が一定程度いるという事です。
第一の特徴としてまず「内容が正確だが細かい」と言う事があります。
内容は間違ってないし、きちんと説明されています。
学校の試験や何かの口述試験であれば100点です。
しかし説明は相手の理解度に合わせて説明しないといけません。
ある程度説明することに関する基礎知識がある人に対してはこのような説明の仕方が一番良いのでしょう。
他方、説明することに関する知識が全くない初心者にこのような説明をしても理解できない可能性があります。
相手の理解のレベルに合わせて説明の仕方を調節しないといけないのですが、その調節ができない人がいます。
私は浪人時代に予備校に通っていましたが、夏休みには様々な短期講座が設置されていました。
金儲けと言う意味もあるでしょうが、その科目ごとに様々なレベルが設定されていました。
同じ科目を教えるのにも相手のレベルに合わせて教え方・教える内容をきちんと変えなければ成果が出ない訳です。
私は初心者の方にはあまり細かい説明をしないようにしています。
細かい説明をしても理解できないと思うからです。
初心者に細かい説明をするのは生命保険の約款のようです。
「確かに説明したはずです」と後から言う事はできるでしょう。
しかしそれに何の意味があるでしょうか?
生命保険の約款のように「ほら、そこに書いてあるでしょ」の世界です。
私としてはあまりそのようなことをしたくありません。
頭が悪い人(または凡人)がつまづくの事が多いのは一番最初の段階なのです。
ファーストステップがつまづきの最大の関門なのに、そこで細かい説明をしてしまうと結局頭の上にハテナマークがたくさんついたままになってしまいます。
ファーストステップでハテナマークがついたままだと次へ進めないのです。
数学が苦手だったという人にどこにつまづいたのかをさかのぼっていくと分数と言った算数の初期段階と言う事があります。
逆に言えば初期段階をクリアーできれば何とかなる可能性が高いという事です。(がんばれ小学生諸君!)
私が説明する時に好きな表現に「政府が救うべきと考えたかわいそうな人」と言うのがあります。
多分私以外に使っている人はいないと思われるフレーズですが、私が説明を求められた場合に良く使うフレーズです。
すべてではありませんが国の行政を見ると大きく分けて2つに分類できます。(本当はどっちにも入らないその他が非常に多くて正確ではないのですが。。。)
1つは成長戦略です。
経済でこの分野を伸ばしたい(環境・健康)とか雇用でこの分野を伸ばしたい(介護)と言ったことです。
もう1つは弱者保護です。
分かりやすいのは社会保障。
この「弱者保護」の時に「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」と言うフレーズが使えます。
例えば社会保障で言えばすべて「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」を救うための制度と言えます。
生活保護は貧困で生活できないから「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」のための制度。
健康保険は病院に行かないといけないから「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」のための制度。
労災保険は仕事中にけがをしてしまったので治療しないといけないから「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」のための制度。
雇用保険は失業して収入がないから「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」のための制度。
年金は老齢でもう働けないから「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」のための制度。
ほら、みな「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」のための制度。
だから弱者保護的性格の時には「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」と言う言い回しが使えます。
パートの方に「この○○○者って何ですか?」と聞かれた時私は「政府が特にかわいそうだと考えた人のことです」と答えました。
それだけの説明で非常に納得して帰って行きました。
外部の方にも「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人が対象となり」と言う説明を良く使います。
概要が分かればあとはパンフレットを渡して読んでもられば分かる場合もあります。
最近のお役所のパンフレットは分かりやすいと思います。
その場で説明する必要がある場合にはイントロダクション(導入部分)として「政府が救うべきだと考えたかわいそうな人」と言うような表現を使います。
そのあと具体的に「このケースでは過去1年に○○が△△以下の場合がかわいそうな人で~」と説明します。
頭が良い女性職員が行うもう1つの特徴として「話し方が異様に早い」と言うものもあります。
相手も頭が良い人なら良いのですが普通の人から見るとまくしたてられているようにも感じます。
これは頭の回転が速すぎて頭の回転に口の回転が追いついてないのではないかと勝手に推察しています。
凡人は頭の回転と口の回転がほぼ一致します。
私のような頭の悪い人間は頭の回転が悪過ぎて口の回転に追いつかず、何もしゃべる事がないと言った間が生まれてしまいます。
頭のいい人は頭の悪い人間の逆なので喋りまくることになります。
私は自分が頭が悪いという事もあるのですが、初心者にはゆっくり時間をかけて話すようにしています。
と言うのも凡人(以下)は知識0の事を理解するのにそんなに早く理解できないからです。
よって私の初心者に対する説明の方針は「概要をゆっくりじっくり説明する」と言う事です。
なるべく数字は使いません。(必要な場合は数字を入れますが最小限を基本とします)
イントロダクションを頭に入れてもらう。
まず制度をイメージしてもらう。
あとはパンフレットでも読めば分かりますし、分からなければ質問してもらえばいい。
そもそも初心者のうちに一から十まで説明したって全部理解できる人はほとんどいませんから。
分数ができればその後の算数・数学はどうにかなるのと一緒です。
大人の世界なのであまり露骨に言われる事はありませんが直接的・間接的に「あり1979さん(私の事)の説明は面白いやり方ですね」と言う意見を聞きます。
これは文字通りの意味ではなく、「そんな説明の仕方をするの?」「役所の説明の仕方としていいの?」と言う意味をいくらか含む訳です。
しかし私の説明の仕方を面白いという人は頭の良い人です。
頭の良い女性(なぜ女性なのかは不明)は私の説明方法と逆の方法を取ります。
それは「正確で細かい内容の説明を早口で説明する」と言う方法です。
分かりやすい例は黒柳徹子氏です。
ですので頭の良い女性がこの方法で説明しているのを勝手に「黒柳徹子状態」と呼んでいます。
私の説明方法をいぶかしるのは黒柳徹子状態の女性です。
またはこのような説明方法を取らなくても頭のいい人です。
なぜいぶかしるのか?
それは頭の良い人は頭の悪い人のことが分からないからです。
逆に言えばなぜ私が黒柳徹子状態と正反対の説明をするのかと言えば私は頭が悪いので頭の悪い人の理解の仕方が分かるからです。
人生を生きていく上で頭が良い方が圧倒的に良いだらけですが、頭の良い人は頭の悪い人の事が分からないという点だけはマイナスだと思います。
官僚の説明が良く分からない事があります。
理由はいろいろあると思います。
難しい言葉でごまかそうとしているのではないかとか。
しかし分かりにくい理由は頭が良すぎて凡人の理解法が分からないからというのもあると思います。
例えば専門語を使ってしまうのもクセで自然と出てしまったというのもあるかと思います。
他方自分が専門語を使って説明されても前後の文脈から意味を推察できてしまう(ケースが多い)ので、凡人(以下)は専門語を使って説明されると意味を理解できない確率が高いことが分からないのではないかと思います。
将来、公務員になる頭の良い方々へ向けて。
凡人(以下)の方を相手に説明する時には気をつけて。
自分の理解能力・方法と違う事を意識しておいて下さい。
最後に補足。
ジャパネット高田の高田社長は商品を紹介する時に商品の機能よりも物語を重視するとおっしゃっていました。
例えばデジカメを売るのに「何万画素」と言ったことを言うよりも「お孫さんと一緒に写真を取って大きくなった時に一緒に笑顔で見る」と言ったストーリーの方が効果があるのだそうです。
これを役所の説明で応用すれば「これは麻生さんの頃できた制度で」とか「こんな制度が3つ残っているのは政治主導の結果その都度制度を作っていった結果で」とかストーリーを入れて説明した方が相手の方も理解しやすいかと思います。
参考までに。