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文学ing

森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

乗せてください、とお願いしたら、私の、アズロマラカイトの義眼を見た乗車取締役は、
「ああ、だめだね。もちゃしないよ」
次の宇宙で私の眼球は砕けてしまうだろうと。だからこの乗り継ぎ列車には乗せられぬ、と言った。
「他に宛はないのかい」
せめて煙水晶くらいあつらえてこなきゃ、次の宇宙まで行けやしないよ、とその鉛で顔を覆った取締役は言ったのだった。
仕方がないね。
と、彼が言った。ルビーの明るい両目を持ったその人なら、第三回宇宙でも耐えられる、と乗車取締役が太鼓判を押す。
宇宙は回数を重ねるほど暗くなるから、そして暗闇はどんどん重くなるから、私の、青緑の濃い目では重くて砕けてしまうんだ。
目を失うと、私たちは死ぬ。目を取り出して、素材で覆ってそれでも生きる人たちを、罵可、たと呼んだ。ばーか。
じゃあ、ここでお別れだね、と彼が言った。第二回宇宙がもうすぐ終わるから、乗り継ぎ列車の乗車手続きにみんな大忙しなんだ。
「君の目をとても好きだよ」
「ええ、私も」
第三回宇宙で彼は誰にそんなことを言うだろうか。
新しい宇宙が暗く重くて成っていくかわりに、今の古い宇宙は明るく暑苦しくなっていくんだ。だからみんな急いで乗り換えようとしている。
彼は鞄を持って私に背を向ける。取り次ぎ口の近くでは、業者が清んだ義眼をポケットから出して、法外な値段で売っているのだった。