同じ惣菜工場でバイトしていて、(弁当にプラスチックの葉っぱを乗せたりする仕事だ)何度か飲みに行ったんだが、そう言えば自分達はどんな関係なんだ? と言う疑問符を、やがて共有していたと思う。
だから試しに、
「うちこない?」
と、言ったら、
「はい」
ためらいもなく着いてきたんだった。ためらいがないから余計、彼女の考えている事が分からなくなった。
冷蔵庫から麦茶を出して、11時だった、飲み屋で腹一杯になっていたから、もう食べるものは必要無いよな。時間的にも、
「今日はどうする」
がそのまま、泊まってけよ、なのだが自分は彼女の姿に戦慄した。
彼女は、自分のベッドと毛布と枕を、白目を剥いて見つめながら、硬直しているのだ。
硬直。固まっていた。全身を接着剤で時間の1ポイントに張り付けたような、救い用のない固まりかただった。
「…どうしたの?」
自分は仕方なく、麦茶を飲みながら訊いた。
「これはベッド?」
「うん」
「これは?」
「毛布」
「そしてこれは枕?」
「そうだけど」
答えてやったら、彼女はふうあ、とバニラの息を吐いて、
「これがかあ」
と、幸せそうに笑った、つまり、それが自分にとって決定打になったのだ。
その日、彼女は自分の寝室の隅で、犬みたいに猫みたいに丸まって、新聞紙を被って眠ったのだった。
自分は他ならぬベッドの上で、カサカサいう彼女のことを見ていた。眠れない。
こんな姿で、寝ている女の子をほおって寝られるか。
自分は丸まった彼女を抱き上げて、ベッドに寝かせたのだった。
と、すぐに彼女は、
「ぎあっ、」
と行って起き出して、あわてて元の位置に戻る。
そして、新聞紙をかけてやすんじた息を上げる。何度か繰り返したがこの夜はずっとそうだった。
カスパーハウザーでもしょいこんだみたいだな、と、自分は寝るのを諦めて、エナジードリンクをナッツのツマミで飲みながら、膨れたはらを抱えて朝の光を見た。
二人で多くは交わさなかった。だが、彼女が自分のベッドで一緒に寝られるようになるまで3年掛かったことから、全ては明らかだし、それで十分だ、と思う。
今では妻には大切なお気にいりの枕と毛布があって、休みの日には幸せそうに天日干ししている。
不幸とは、つまりこう言うものだ、と、自分に辞書が書けるならそうするだろう。