そんなこと誰が決めた?
私だ。
私が決めて、私が実現するはずだった、未来、未来からの現実。
でも現実は違う物になった。自分のものでもない人のためにどうしてこんなに疲労困憊しなくてはならないだろう、やめりゃいいのに、と思いながら、謂わば私は"尽くしている"。自分のものじゃない人に。
同じ事を、やってみたことのある人に聞いてみたいのだけど
(自分のものにならない人のためにぼろぼろになるまで働くこと)、
私は錆びた蝶番みたいに、きりきりごりごり、神経が鳴る。そうなると寝られない。寝られないから酒を飲む。だから朝の目覚めが最悪なのだ。
今朝もすっぱだかになってユニットバスのカーテンを閉めて、冷たいシャワーを首筋に当てている。ずぶ濡れになる頃ようやく私にも寒いとか暑いとかの感覚が宿っていることを思い出す。
「ぎょうずいだぜ」
小学校1年生の春だった。近所に住んでいる幼なじみの高木くんと河川敷で遊んだ。もうない。でもその時は菜の花が海になっていた。もうない。いまはただ、まさ土で舗装されてしまったんだ。
菜の花が海になっていたのだった。2人でそこを走り回って遊んだ。
「ぎょうずいだぜ」
と彼が言った。やおら花野にねっころがって転がり出した。行水と言うことばを知らなかった私は、それなに、と聞いた。
「ふろだ、ふろ」
と彼は笑った。
それで、一緒になって黄色の中をごろごろごろごろして、ただ、それだけをしていた。
服も紙も花粉でだいだい色になってしまって、家に帰ってからおばあちゃんに殴られた。
「行水なんだから」
私は自分に言い聞かせる。昔の、よかった時代に逃げてもだめだ。
冷水を浴びろ。
そして、なるたけ早くこの未来から覚めるのだ。