長編お話「芦原血祭物語」“ウィルス” | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

ズン

と深夜に体にかかるこの圧迫、私は仰向けで寝ていたのに、胸の上に何か落ちてきたよう気がして息が出来ない。

「また!」

 

前回、ミツキに言わせるとご先祖(見たり理解したり出来ない私にとっては、ご先祖だろうがなんだろうか迷惑な人たちに変わりはない。)に祟られた時からたった三日しか経っていないのだ。

 

最近頻度が増している。そして、私が迷惑をこうむるのだ。迷惑だ、実際。私は子供のころからこんな風に云われのない厄介事の被害に遭っていた。

「ミツキ!」

痛みを感じてから三秒後にはスマホのコールが鳴る。

「ミツキい。」

なんだって私がこんな目に。毎回毎回、身体が痛くなるのは私の方で、意味が分かっていて対処も出来るミツキはケロッとしている。それでも私はムカつきながらでも、痛みを堪え電話に出た。胸の中に何かため込んだような、壮絶な不快感。

 

「指を唱う、」

とスマホごしにミツキの声が聞こえた。私は黙ってやつが早くこの苦痛を処置してくれるのを待っている。

「恵(けい)、」

私が何も言わないことに反応しない。こういう時のミツキはちょっと怖い。やつは、そんなやり方を、大きいおばあちゃんに教わったんだと言っている。

そしてそういうものの存在を、神通というのだ、と恵俊さんは教えてくれた。

 

「お前らがいなけりゃ俺だってまゆつばだよ。」

お寺の跡取りの癖にそんなことを言う。恵俊さんは私たちより八つ年上で、今年大学を卒業して本式にお坊さんになったのだ。でも、剃髪はしなくていい宗派なので髪の毛は少し長い。

 

「休(きゅう)、善(ぜん)、神(しん)、力(りき)。」

こういう時のミツキの声は重くて太い、スマホの向こう側でミツキの声が止まった。

そして、その瞬間に、キアン! 

と金属が擦れるような音が私の鼓膜を突き刺す。また迷惑な激痛。でも、胸の痛みは治まった。

 

「笹子?」

ベッドサイドに置いていたスマホからミツキが何度も呼んでいる気配があった。

「笹子、笹子、大丈夫?」

私は大きく息を吐いて、スマホの向うに返事した。電子機器が繋いでいる二つの空間の、片方にだ。

「大丈夫。もう痛くないわ。でも、…ちょっと重苦しいかな。」

うーん、と言った、ミツキが。

「どうしてだろう。完全に払えなかったわ。」

「今度は何?」

迷惑をこうむる私は訊く権利を持っている。

「まつろわぬ神。」

とミツキは言った。

「つまり反逆者の霊ね。」

「なに、それ。」

「なんでも、そういうものなのよ。」

私は歴史と古典が得意だ。暗記科目は得意だ。

 

「でも完全に居なくなったわけじゃないのよ。」

「どういうこと?何があったの。」

少し余裕が出たので、薄明りの中時計を見たら、深夜二時だった。

「だから何があったのか分からないの。」

うーん、とまたミツキは言った。