小説「おどる獣たち」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

ああ裏山に住んでるんだろうな。
みんな二本足で立っていた。

くるくる回って両手をあげて、それを打ち鳴らし、はらってはらって、ぴょんと跳んで。前へ。前へ。

踊っていた。
輪になって踊っていた。たぬきとかキツネとか犬みたいのや猿とか熊とか鹿とかうさぎ?小さいやつも。

輪になって踊っていた。

僕のうちの、庭の真ん中で。そして僕の視界はぐねぐねに歪んで、奇妙な動物達の姿を追えなくなった。
目を擦っていたら、訳がわからなくなって僕は倒れた。
倒れたのだと思う。覚えていない。

“死人が出るときは、庄屋の家で獣が踊る。”

僕の家はもとは庄屋だった。
おじいちゃんは、先月から意識がない。

“死人が出るときは、庄屋の家で獣が踊る。”
言伝えと言うやつだ。
“獣が輪になって、右回りに踊っていたら、まだ助かる。
左回りに踊っていたら、そりゃもうだめだ。”

「お前、変なもん見たな。」
翌朝おばあちゃんにこっぴどく叱られた。
「夜半なって外見るもんがあるかっ。」
と言って叱られた。僕が見たものを、何で知っているの。

「さきことは、わからいでいい。そげなもん、みいでもいい。」
だけえおばあが止めただぞ。

「おばあちゃん、僕は、」
「さきことはしらいでいい!」
おばあちゃんはめちゃくちゃに怒っていた。
僕は、動物達が、右側か左側か、どちらに向かって踊っているのか、確かめずに倒れた。
先に起こることは知らない方がいい。
そう、おばあちゃんは言った。どうしてだろう。なぜだったろう。

次の日の正午過ぎにおじいちゃんは亡くなった。
だとしたら、獣たちは、左に向かって。