小説「サマタゲ姫」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

一人目の女の子は、美しい景色を見るようにと
美景、と名付けられた。
二人目の女の子は、美しい音を聴くようにと
美歌、と名付けられた。
三人目の女の子は、素晴らしい事が起きるようにと
晴美、と名付けられた。
さて四人目の女の子が産まれたとき親も考えた。
女も四人目になると、もう要らない。珍しくもないから可愛いとも思わない。
だから次いでだ、この子で他の三人に災いが及ばないような、何がそう言う「保険」にしよう。そう考えた。
だから私は「せき子」と名付けられた。責任のせき子、である。
可愛い三人の姉に何が起きたとき、私が責任を取るようにと、そう願って、せき子、と付けられた。
「反対しようと思ったけど、止めたのよ。」
とおばあちゃんは話してくれる。
「あなたの名前の本当の意味は、さえ。」
さえとは妨げと言う意味だ。
せき、と言う音は石に繋がる。昔から土砂崩れなんかを防ぐために、地下水の要衝に大岩を置いて神様として祀った。農地に災いが起きないように。豊かな実りがありますように。
さえとは、一定の領界内に悪いもの、悪いことが起きないように遮っていると言う意味になる。

つまりね。
金庫の鍵を持っているような物なのだ。おばあちゃんは教えてくれる。

「だから反対しなかったの。」
と言う。

三人の幸福な姉に、災いが降りかかるか鍵を握っているのが私。せき子。
災いは、防ぐ事が出きるなら、ば防がない事も出来る。それが私、石子。おばあちゃんは処女のころ近所のお宮の掛け持ち巫女さんをやっていて、宮司さんからいろんな秘伝を聞いたらしい。
「みんな教えてあげるからね。」
と、みんな私に教えてくれた。

私の本意はサマタゲ姫。
三番目の姉が大学を出る。私は、大岩となってその前に立ちはだかる。