メリーゴーランドは一回で嫌いになった。幼い私は一度乗ってみたりと憧れていた。父は家にいないことが多かった。私が遊園地に行けるチャンスは、少なかった。
一週間、熱が下がらないでいる。仕事に行っても印刷の時の用紙指定をミスるとか下らない失敗ばかり繰り返している。
私は毎朝最低な気分で目を覚まし、最低な体に濁って見える水道水と解熱剤を入れて、フラフラになりながら出勤する。
家に帰ってくると何も食べたくない。でも食べないと話にならないから、冷飯に冷水でお茶漬けにしたりしてどうにか体に入れる。そして最低な気分で眠りにつく。
だから目が覚める時もやはり最低な気分だ。
私はなぜこんな熱が続くのか分からないでイライラしていた。細かい毛が逆立ったような神経で眠りに付こうとすると、メリーゴーランドの事を思い出した。私は、余計にイライラして眠れなくなり、冷蔵庫の中のズブロッカをがぶ飲みして余計に最低な気分になるのだ。
メリーゴーランドは一回で嫌いになった。なんでこんな能天気な乗り物が。
どうしてこんな能天気な乗り物を考え出さなくてはならなかったのだろう。
私の父は一日に20時間働くこともざらだった。
幼い頃はそれを理解していなかったけど、お父さんが居ないのはおしごとがたいへんだから
だと言うことくらいは分かっていたと思う。
だからこそ頭に来た。
お父さんが、あんなに、真っ青な顔になるまで、働いているに、何を思ってこんな能天気な。
一体誰が何を思ってこんな能天気な乗り物を考え出したんだろう。
ぐるぐる回ってはい、お仕舞い。こんな単純な。
そしてその単純な機械のスイッチを押すだけの仕事。
私はその小さい日に感じた怒りを思い出して、寝る前の頭がくらくらと傷んだ。
あんな単純な仕事に多くの人間が喜んで乗っている。もっと苦しんで仕事している人がいる一方で。
許せない、と思ったものだ。あんな単純なことでお金を稼ぐ人のことが許せない。
私は、一向に下がらない微熱を抱えて夢を見ながら、隣の木馬に乗っている男の子を突き落とした。
(それは、かつて夢見たこと。)