伯母でもなく、従兄でもなく、私だった。その手を握っているのは。
伯父の臨終の席で、既に冷たくなっている右手を私は両手でしっかり握っていた。
おじちゃん、おじちゃん、
と言っても、いつだって、おお、きっちゃんかあ。と答えてくれた、声の方が先にこの世から逃げてしまったのだろうか。
父のない私に、最初から手を延べてくれたのがこの伯父だった。
母と伯父は五人兄妹の長子と次子という関係で、年が近かったことからあまり仲も良くなかった。
しかし、どうしようもない男の種から生えて、そのどうしようもない種馬にさっさととんずらをこかれた情けない私に対して、いつも手を延べてくれたのが伯父だった。
おじちゃん、と言うと、いつも何していても、おお、きっちゃん来たかあ。
と喜んで迎えてくれた。
そんな伯父の最期の手を、私だけが握っている。
おじちゃん、おじちゃん、と言ってももう答えてはくれない。
私が掴んでいる右手はもう冷たく、紫色になっている。
この辺の細胞はもう生きることを止めたんだ、なのに伯父の心臓はまだ脈打っている。
ピクン
ピクン
と言ってモニターにその痕跡が映る。タイミングは徐々に遅くなっていっている。
その最後の手を私が握っていた。伯母でもなく、従兄でもない。
居合わせた誰にも口出しをさせず、私は伯父の手を掴んでいた。
私がこの世で掴むことの出来る、最後の右手を。