小説「灯る息吹」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

ありゃあもともと枯れ木だ。伐るのが面倒だから置いといただけだ。お前が生まれてからあんな様に生ったんだ。
だから、せいぜい、大事にしなさい。

と、言われている。
家の裏に、立っている、桐の枯れ木のことだ。

俺は知っているけど桐の花は本来薄紫色だ。

しかし、その桐の枯れ木には、なぜがガス焜炉の様な青い花が咲く。
枯れているのに、である。訳が解らない。だが毎年春になると確かにその干からびた枝の上には青い火の様な花が息を吹く。

大事にしなさい。お前と何か縁があることだ。

と俺は言われている。
何をどう大事にすればいいのか解らないが、ともかく、俺としても言われたように、花が咲くと幹に酒なんか掛けてやったりする。酒でいいのか解らないけど。なんとなく、酒。

何故青い花が咲くのか、何故俺が生まれてから咲くようになったのか。
母親は邪魔なものが伐れなくなって面倒だかと毒づく。

俺はお前と命を分けたのか?
と俺は青い息吹に問いてみる。

俺の命はこんなような見事な姿を持っていたのか?
それを見せるために、お前はこんな風に青く咲くのか?

これが俺の枯れ木に対する気持ち。
言い過ぎだがきょうだいに対するそれのような気持ち。

春になると枯れ木には青い花が息吹く。
俺も、こんな風に見事に生きられるだろうか。そう思う、春の始り。