私小説「眠りに関するそれぞれ」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

倒れ臥している、
というのが私の感覚なのだが人から見たら単に
寝ている

だけなので、寝ているとき、と記す。

赤んぼうの頃長男は私が寝ていると無茶苦茶嫌がった。
嫌も何も私は寝ているしかどうしようもないので、
寝ていたんだけど、
長男は無茶苦茶いやがって私の体に取りすがってあーあー泣いていた。

全く反応しない私の体に掴まって、小動物より猶頼りない両手のひらで必死に私の体を押しながら、
あー、あー、と言って泣いていた。
少し大きく成ってからも彼は私が寝ているとやはり大変嫌って、

「寝ないで!」
と言って怒った。私は堕情で寝るわけではないので、寝ないことには体が持たないので、
怒る長男を、却って怒鳴り散らして、それで寝ていた。ひどい奴も居たものである。

夫は私が寝ていると、
亡きものとして扱う。
其処に無いものとして扱う。だから視界にも入っていないし、
入っていたとしても大して問題ではない。
彼にとって私の眠りは時々ある天候不良みたいなもので、
避けられない代わりに特に問題があるわけでもないのだった。

特に問題があるわけでもないのだった。
だから私は眠ると夫の前から消える。亡きものとなる。そして私は眠っている。土に埋められた様になって眠っている。

私が寝ていると、次男は私の側でよく眠る。
彼は普段私の意等全くお構い無しに一人好き勝手に遊んでいる。
本当に好き勝手に遊んでいる。これが今に保育園に入るようになったらどうするんだろう。
保護責任の有る身で心配に成ってしまうんだが、とにかく彼はお構い無しに一人やりたい放題して遊んでいる。

そんな彼をほったらかしにして、私は床で寝ている。
本当は倒れ臥しているのだが誰にもそうは見えない。
私は寝ている、様に見えている、と思う。本当は寝ていると言うか動けない。だが人の眼には、私はなんだか惰性で眠っている。

私が眠っていると、次男はやがてあそびをやめて、何故か私の所にやってくる。
私は腹の辺りに、
小さい、暖かい、規則正しい息の気配を感じる。
薄目を開けてみると、次男が横たわった私の腹の辺りに食らいついて、静かな寝息を立てている。柔らかい、ちいさなぬくい固まりになって、次男が眠っている。

私が眠るとき各々の眼には一体どう写っていてるのだろうか。

めんどくさかったりどうでもよかったり、腹立たしかったり、写っているのだろう。

私は人に迷惑を掛けながら生きている。迷惑を掛けながら人の世話になって生きている。

どんなに眠っている時間が長くても、それでも私は生きている。