「王様の処刑」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

王様は暇を持て余していた。

「どうして?」

居ても居なくてもいいからさ
と王様は答えた。

「居ても居なくてもいいならどうしているのさ。」

居なくてはならないからさ
と王様は答えた。

「居るのかいないのか、どっちさ。」

誰かがいればいいのさ。誰かでなくてはいけないわけではないのさ。
と王様は答えた。

「誰でもいいってことなのかい。」

そうさ、王様はいればいいだけのことなのさ、誰がなったっていいことなのさ
と王様は答えた。

「そんなの大変むだじゃないか。」

いや、そうでもないのさ
と王様は答えた。

王とは入れ物なのだ、と王様は答える。

私は入れ物なのだ、
不幸が興るとき、怨嗟が湧いてくるとき、糾弾の声が鳴りやまなくなったとき、
そういうものを入れる入れ物なのさ

だから誰がなったっていいんだけど、
今はたまたま私が王様をやっているだけなのさ。

不幸が興るとき、怨嗟が湧いてくるとき、糾弾の声が鳴りやまなくなったら、
見ていてご覧、
私は死ぬよ、
王様とは入れ物なのだ
不幸や怨嗟や糾弾を一杯に詰めて、
不愉快なそれを目に見えないところに捨ててしまうための、
いれものなのさ。
と王様は答えた。

「じゃああなたはごみ袋ということだね。」

そう、すべての責任をぎゅうぎゅうに入れたごみ袋だ。
燃えてなくなるために、私はここに居るんだよ。
と、王様は答えた。