小説「囚人」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

皿の上には皮を剥いた魚肉ソーセージとめろんぱんとポカリの一リットルボトル。

毎日これだけは律儀に配達してくれる。体育倉庫の天上近くの格子を一本破って其処から紐で吊るした紙袋を下ろしてくるのだ。

僕はマットやとび箱を重ねてその窓からの脱走を試みたのだが、窓自体はとても小さく僕の肩幅はとてもじゃないが通らなかった。

僕は皿の上のパンとソーセージを見てマットの上に座っている。体育倉庫の入り口には閂が掛かっている。これは、確実に開かない。
体育倉庫は壁が暑く断熱性が高いためかこうしてじっとしていても死にそうなほど暑くはない。
それだけが唯一の救いだろうな。僕はもう皿の上の食べ物を口に入れようと言う気を無くしている。でも毎日同じものが律儀に運ばれてくる。

僕は五日間この体育倉庫の中に一人でいる。

やつらは僕を殺すつもりなのかもしれない。
いや、殺すつもりがなくてもこの状態が続いたらちょっと僕は分からないなと思っている。

中尾の家に泊まってみんなで宿題をしよう、と言われて夏やすみ中尾の家に集まった。

初日の夜に、
「なあ、牢屋ごっこしようぜ。」
と友野尾が言い出して、いいぜ、やろうぜということになって僕が深夜から体育倉庫に入る事になったのだ。

それ以来奴らは入り口の戸を開けない。僕も最初は冗談だと思っていたんだが、
冗談が二日目に入ったとき、諦めた。


そうか、奴らにとって僕はそういう対象だったのか。
そう思って諦めた。

奴らにとって僕は牢屋に閉じ込めておく対象だったのだ。
じゃあしょうがない。閉じ込められた以上しょうがない。

僕は天上近くの格子窓から入ってくる光が弱くなっていく事で五日目の夜が来ることを知った。

ポカリだけは毎日飲んでいる。

死は確実に其処にあった。