長編お話「その顔に、根の跡」40 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

女は一人で喋り続けていた。
「でも娼婦ってなろうと思ってなれるもんでもないじゃない? それなりに経験とスキルが必要だと思ったわけ。

それでね、
中学適当に出た後でその道のお店にいろいろ勤めたのよ。

女のゲンバ。
基礎的なことから理論的な事とか応用編とか緊急時の対応とか、
ワタリをつけるにはどうしたらいいのかとか。そう言うことを勉強しとこうと思ったのよ。

だって後々その方が客とるのに何かと役に立ちそうじゃない。
ああ。そうか。
あなたみたいなひとには分からないか。まあとにかくね。私はそんな風に考えたの。

だから10年くらいひたすら女のゲンバを勉強したのよ。

結構いやな事も多かったなあ。
いやね、女のゲンバってもちろんものすごく頭のきれるひとも居るんだけど基本的にみんなバカなのよ。
バカがバカのことばかって言ってるんだからまちがいないと思うのよね。

とにかくみんな私と一緒。
まともに生きてもつまんないだけって分かってるもんだからこっちのゲンバに来るのよ。ばかだから。
ばかとばかをかち合わせると感じわるいわよお。
結局みんな頭悪すぎてわけわかんないんだもん。
今までほんとに何考えてるのか分からない奴が何十人といたわ。

それでね。やっと、客とってやってけるようになったのが割りと最近なの。
顔と体はね、お金よ。うそっぱちよ。お金かけてりゃいいよ、こんなものは。

私ね、結構うまくやってると思うんだあ。常連さんも居たりしてね。
実入りはまあ、たいしてよくないんだけどさ。
楽しく生きていくつもりなんてないわけしゃないですか。
だから体のメンテナンス以外に対して生活費も掛かんないの。私、自分のお金でご飯食べるの嫌いだし。だいたいいつもお客にご飯食べさせてもらってるのよ。
一日一食。
ダイエットにもなるから便利だと思ってるの。
それで夕方から仕事してね。
私この仕事結構好きだなって思ってるのよね。
だって終わりが見えるもの。いつか死んじゃうためだけにやってる仕事だから、コダワリトカなんにもなしに出来るのね。
良い仕事してると思うのよね。だから貴方たちには悪いんだけど。止める気は更々ないのよ。悪いけどね。」
女は一人で喋り続けていた。