小説「セルフプラネタリウムが無い夜は」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

「星なんて屋根に上がってねっころがってみてろ。」
と父に言われて、じゃあどうやって屋根まで登ればいいんだよ、と食って掛かったら、僕の部屋の窓の下のひさしの所に足場を組んで、そこから梯子で屋根の上に上がれるようにしてくれた。

プラネタリウムに行きたいとねだった時のやり取りだ。

そんなことしなくてもプラネタリウム、連れていってやったらいいでしょう、と言ってお母さんが怒った。めちゃくちゃ怒っていた。

でもそんなわけで僕は窓から屋根によじ登って星を眺めている。
屋根の上はねっころがるのには快適な場所ではないので、大体体育座りして見ている。

星がはっきり見えるほど真っ暗な夜少ない。

近所に大きな運動競技場があって、時々しつこいくらい夜中まで明りが点っている。そんなときは星どころじゃなくて、空は冗談みたいな、茶色をしている。

僕は夜に梯子を登って屋根に上がった。プラネタリウムで星が見たいとねだったのが始まりだったんだけど、
今では夜中に屋根に登る事に目的が刷り変わっていた。夜中に家の屋根の上で一人っきりでいると、そこはもう間違いの無い

夜だった。

僕は結局、夜で遊ぶのが気に入ったのだ。僕は雨の日も傘を持って屋根に登った。あんまりしょっちゅう屋根をぎしぎし言わせるのでお母さんにそのたんび叱られた。

落っこちたらどうするの!
と言って怒られた。二階建ての屋根なんかから落ちたってどうってこたないだろう、と僕は思っていた。
骨が折れるのくらい何だってんだ。

僕はある夜、雨で星の見えない夜、合羽来て傘持って、思い付いて昔使ってたキャンプのテントのカバーだけ持って、屋根に登った。

僕はテントを無理矢理広げてその中に傘を突っ込んで開いて、テントの中に入って傘を抱えて懐中電灯を点けた。
懐中電灯着けた途端に辺りが真っ暗に成ったのを僕は感じた。

僕は懐中電灯を足の間に置いて、傘の柄を支えながら、ただ屋根の上に座っていた。テントの外を雨がばらばらばらばら落ちていった。

この時僕は、
自分が宇宙の一部であることを嫌と言うほど感じていた。
僕は一人だ。宇宙とおんなじ暗がりの中にたった一人だ。

何処か知らない遠いところでぼんやりくるくる回っている暇な星と同じように、
宇宙の暗がりの中でたった一人だ。そこの星も僕も、永遠の向う側で物凄い爆発が起きたときの名残を確かに体に抱えているんだ。

そう思って物凄く独りだった。

結局僕はそれが好きで屋根に登っていた。中学を卒業する頃に、いよいよお母さんにこっぴどくしかられて止めてしまったけど。