「ソメイヨシノって不様な花よね。さっさと散っちゃうし。
散ったあとの花びら汚くない? 山ほどあるしすぐ腐っちゃうし。
実が生る訳でもないし。
迫力があるわけでもないし。ブーゲンビリアとかに比べたらぜんぜん地味」
「君は桜が嫌いなの?」
「そう、嫌い。桜と言うか桜にかこつけて何かと稼ごうと言う精神がきらい。」
と彼女は言った。僕と彼女は桜並木の下を並んで歩いている。
桜について盛んに悪口を言っているけど顔だけみたら非常に機嫌がよい。
暫く会えなかったのだがやっと休日がマッチしたので桜でも見に行こうか、と言う話になったのである。
だから僕が言うのもなんなんだが
彼女は今日機嫌がいい。
「僕は好きだけどなあ。火みたいじゃないか。」
と僕は言った。
「火? なんで火?」
既に道の端に積もっている花びらを足で蹴って散らして遊びながら、彼女は聞き返した。
「これさ、小さい火が灯ってるみたいに見える。僕は。」
僕は頭の上の枝を指さしながら言った。
「そう? そんなふうには見えないけどなあ。」
「小さい蝋燭の火が沢山点いてるみたいだ。風が吹くと消えちゃうし。」
「なんかロマンを語ると気持ちわるいよ。」
と彼女が言った。
「それはごめん。」
と僕は言った。
「でもそんな風に言われると確かにそう見えなくもないね。」
彼女は立ち止まっていた振り向きながら言った。
「すぐ消えちゃうのになお灯ろうとしてる。そう考えるとなんだかこんじょうをかんじるね。」
そう彼女は言った。笑っている。機嫌がいいのだ。
「でしょう。なんだか底力を感じるでしょう。」
うん。と言ってたこ焼の屋台を見つけた彼女は、
食べたい買ってきて。あとビールも飲みたいと僕に断固命じるのでした。