小説「助霊」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

「真名を暴くと亡霊は消えるぞ。」
「そんなに簡単なことでもないんだよ。」

打開索の見えてこない状況に、私は疲労していた。
だから友人の民俗学者のアイディアを一蹴にしてしまった。
…あまり突っ慳貪だったと思い、
「いや、悪かった。」
と言った。

「でもどのみち亡霊には名前を返してやらないといけないんだ。」
と奴は言う。
「と言うか名前が無いから亡霊と言うのだけど。」
「その名前が分かればなあ。」
そう。
その名前が解れば問題は糸がほどける見たいに簡単に終息出来るのだ。

「でも、簡単じゃないことが分かっていると言うことは、
手段があることは分かってるんだよね。」
「分かってるよ。」
私は奴の本棚にあった客人神の地域差についての論文を出してきて2ページくらい読んだ。
「手段はあるよ。みんな知ってるよ。でも禁じ手だから。」
「なんで禁じ手?」
と奴はPCに向かって仕事を進めながら振り返って私に聞く。

「お前なあ現状全員のユウレイに名前を返したらネットが大混乱なのくらい分かるだろ。」
名前が持たないウエブコメントをユウレイと言う。
個人情報を解放すれば今起きている全てのトラブルは解決する。
それは分かっている。分かっているからそれが出きる。出来るけどやらない。
全てのユウレイが還俗したらウエブが存在できなくなるからだ。結局ウエブはユウレイの存在によってその意義を補完されている。

「でも君達は全ての亡霊の真名を把握してるんだよね。」
「してるよ。」
私は奴の台所に行ってビールがないか勝手に漁る。
「本当に、ぶちまけてやれたらどんなに良いかと思うくらいだ。」
ユウレイの世界を生身で管理する煩雑に私は苛々して今アナログの時間を謳歌する。