長編お話「東尾言語」の38 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

後期の授業が始まってから私は友だちが出来た。みかちゃんという。
古典文学の時間に偶然隣に座った彼女から、ノート忘れちゃったからルーズリーフ1枚分けてくれない?
と頼まれた。私はいいよ、と言って自分のルーズリーフを1枚渡したのだけどその時に
「ねえこの講義のノート取ってたらコピーさせてくれない?」
忘れたもなにもみかちゃんは今まで講義をサボり続けていたのである。
私たちは講義が終わってから購買部に置かれているコピー機でノートのコピーを取った。
みかちゃんはお礼にと言ってパンを買ってくれた。レーズンとクリームチーズが入ったやつ。
そうして私とみかちゃんは仲良くなったのである。

みかちゃんはピラミッド部(通称ピラケン)に入っていた。そして文化祭の壁面展示のために

クフ王のピラミッドはクフ王のピラミッドではない。

と言う矛盾を感じる研究をしているのだ、と楽しそうに話した。
みかちゃんは桃が丸ごと入ったゼリーを買って食べている。購買部を出た所の生け垣の前のベンチで。
「何? クフ王のピラミッドってクフ王のピラミッドじゃないの?」
私は聞いた。
「そうなの!
大体からしてね、ギザの大ピラミッドがクフ王の建設に由るって言う根拠が乏しすぎるのよ。重力軽減の間にあるカルトゥーシュだけなんだから。
他に絵や文字が残されていないんだし。だからその大切な唯一の根拠だってつい最近まで落書き扱いされてたくらいなの。
ほんとに走り書きみたいに書かれていてね、ク、フ、と読めるかどうか疑問視している人も結構いるのよ。」
みかちゃんは一人で喋り続けるタイプみたいだったけど、時々は話を止めて、私のことをじっと見た。
聴いてもらうのが好きな人なんだな、と私は感じた。好感を持った。
「今度市立博物館に古代マヤ展が来るから一緒に見に行かない?」
と誘われる。私は楽しい気持ちで
「うん、面白そう。」
というと、ありがとう、行こう行こう!とみかちゃんは喜んでくれた。