小説「ノイズ」 | 文学ing

文学ing

森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

途切れ途切れするノイズの向うから時々、現実の音が聞こえてくる。

それでは嫌だからノイズの方を現実だと思うことにした。曇り夜空にちらほら見える星、みたいなものが現実だと思いたくなかったのだ。絶望的じゃないかそんなもの。

ノイズ、雑音、悪口雑言、不協和音、そう言うものを現実だと思うことにした。その方が哀しまないで済むから。

要するに私は幸福を恐れているのである。そんなものが自分の物になったら恐い。
もし幸福が自分の物になってしまって、それからこっぴどく失ってしまったらどうする?
そんな事を考えるのは嫌だ。
私は幸福を囁く現実の声から耳を塞ぐ。貴方は大切な存在だ、感謝の心を忘れずに、希望はけして無くならない。いつかはわかり会える時が来る。
そんな絶望的な声から耳を塞ぐ。

私はクラスに居場所が無い。無くても構わないから居場所が無い。

佐々木さんはだらしない人ですから皆で笑いましょう。と先生が言う。
佐々木さんのおじいさんて戦争のときひとごろししたんだって。だから佐々木さんも死ねばいいよね。と隣の席のこがいう。
あんたこれだけ言われてて言い返さないなんて恥ずかしい子ね。と伯母さんが言う。

現実から耳を塞ぐとノイズが沢山聞こえてくる。
そっちの方がよっぽどいい。現実なんて、曇り夜空のそのまた向こうの
荒唐無稽なでっち上げだ。
そう思って居られれば、私はこれ以上、少なくとも苦しむ必要はない。