「梶。」
「どうしたの東尾くん。
もうぼちぼち帰る方法探さないともう、
えーと九時半だね。」
「そんなに経つのか。
さくらさんの所を出てきたのは7時くらいだったな。」
「随分歩き回ったんだね。二駅は優に歩いてそうだな。」
「更に四駅歩きたい気分だ。」
「まだまだ夜は冷えるよ。
凍死に気をつけて。冷気っていうのは馬鹿に出来ないからね。僕がいうんだから間違いない。」
「おまえの実家と言うのに一度行ってみたいもんだな。」
「お見せするようなもんじゃない。」
「梶。」
「どうしたの。」
「おれは20年生きていて大して欲深いほうじゃない。
でも肝心の欲が寄りによって叶わないというのはなんだってんだろうな。」
「ははは。僕は基本的に欲がないから。」
「おれ知ってるけど梶が意外に一番欲深いんだぜ。」
「ははは。」
「おれは、何て言うのか、貧乏籤に当たったようだ。」
「どうしてまた。」
「抱えきれないくらいあたまんなか一杯なんだよ。」
「さくらさんのことでね。」
「そう。そう、
そうなんだったら良かった。」
「違うのか。」
「そうだ。」