小説「ミント水」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

ミント水の瓶が汗をかいている。
テーブルの上には朝日がよく中る。ミント水の瓶は水滴に飾られて、それは一つひとつが
ちかちかり
と光を反す。
あたしは生きてんだよこれでもね、
意味の無い主張を居ない相手に示しでもするように。

ミント水についた水滴によって、僕は母親が一度は起きて、再び眠ったことを知る。

庭に自生したミントを摘んで
パンパチン
と叩き、瓶のなかの水に浸して冷蔵庫に入れておく。
毎晩泥酔する母親は、眼を冷ますと激しく水を欲する。
その為のミント水である。

恥ずかしくなると、死にたくなるのだ。
恥ずかしいのが一番死にたい原因だ。

と、これが口癖の母親は今朝も健やかに寝息を立てている。
母親は大酒飲みを恥じている。寝てばかりの毎日を恥じている。

ミント水の瓶が光を反す。ちかりちかりと反射する、息をする鉱物のように。
ただの水でも輝石のようだし、単なる草でも玉のように見える。

朝日の中る台所にて。