『寿がれつついく二人』 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

中央緑地公園に、幸福の鐘、というのがある。
あなたが幸福を得た時、鐘を鳴らしてください。
誰かのところにも幸福が届くように。
って、ちゃんと碑文が付けてあるのに、だれも読まないんだから、
結局
「この鐘を鳴らすと幸福になれる。」
というふうに意味が変ってしまっていた。
そのせいかどうか知らないけど、幸福の鐘のあたりに人だかり。
正装じゃないんだけど、かわいい白い服を着た男の子と女の子が、
鳩を飛ばすでもなく、米をまくでもないけれど、
きっと結婚式をやっていた。
若い二人だった。
お金ないから、せめて友達がたくさん集まって喜んでいるみたいだった。
私が結婚するとき
誰も喜ばなかった。
むしろみんな怒った。
夫だった人には「遺伝性の疾患」があった。
「遺伝性の疾患」のせいで仕事するのが大変だった。
しかも私は頭が悪くて、どんな学校もちゃんと出たことが無かったから、
出来る仕事と言ったら金融機関のチラシを
知らない人の家のポストに入れるくらいだったのだった。
私達はすばらしくぼろぼろの家で、素晴らしく貧乏な3年を送った後、
夫だった人は「遺伝性の疾患」で亡くなった。
実家には私の帰る部屋がなくて、今はこんな風に彷徨っている。
私が結婚するときに、誰も喜ばなかったことはもう哀しんでいない。
原因が全部自分にあると思えるからだ。
でも原因を作るように生きてしまった自分には
やっぱりそうとう駄目なんだと思っているのだ。
私は自転車を漕ぎ出して、
どうしようもなくて
ばーりばりばりばーりばり
と暴走族の真似みたいなことをして
善良な何人かのひとを哀しませた。