『小野田は善人になった』 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

小野田がいい人になるなんておれが金持ちになるくらいのもんだろ
と言ったら、
そうだそうだ、と言ったやつと
ああ、まあ、と意味不明に曖昧に笑っている奴が半々だった。
小野田は中学の同期だ。
陸上部とバスケ部と空手部掛け持ちしているような
バカみたいなやつだった。
しかし問題はそこになくて、
そんなバカみたいなことを一人の生徒に許している学校ちうのがそもそも
いいのかよ、なんだったんだよと思っていたのは、
おれだけだったのかな。
小野田は三つ入っている部活で全部好成績を残していた。
バスケ部だけは団体戦だから小野田一人でなんとかなるということでもなかったろうが、
陸上の幅跳びと空手の演舞で県1を取ったのだった。中三。
だから当然、というなら偏見だろうか。
小野田を止められるやつなんかいなかったんだ。
小野田が「こうだ!」
と言ったことならなんでもかんでも「こうなんだ!」
だから、
高校行ってからあいつも相当あったんだろう。
なんせ関西のスポーツ高に飛び出しちゃったんだから。
そりゃ上手く行かないだろう。
それ以降、インハイだのインカレで小野田の名前なんて一回も聞かないもの。
だから小野田は善人になったんだろう。
小野田が善人になった。
ただそれだけのことを、
善悪で測るのがこんなに難しいなんて。