今朝の9時頃、私の携帯電話に未知の電話番号から着信があった。こういう時に出るか出ないかの判断を下すことには多少の躊躇を感じないわけにはいかない。これがメールならば、相手のメールアドレスと用件に覚えがあるかないかを確かめた後に開くか捨てるかを決めればよく、間違って開いたところで内容を見れば詐欺か必要な要件かの判断くらいはつくのだが、電話の場合はその判断を瞬時につけねばならないプレッシャーが働くのだ。もしかすれば相手は私の知人か、利用しているサービスの提供会社かもしれないのだ。私は一瞬迷った後、電話番号が表示されていることを確かめて電話に出た。少なくとも非通知の相手ではなかったからだ。

 

電話の声は録音メッセージのようだった。用件は「あなたの通話料金が未払いになっています」というものだった。この時点で詐欺であることが明白だったので、私はすぐに電話を切り、所轄の警察署に電話した。電話による詐欺と見られる行為が発生している事を告げ、私の判断が正しかったかどうかを確認し、警察として必要な措置を促す必要があると思ったからである。担当者は慣れた口調でそれが詐欺電話にほぼ間違いないことを教えてくれた。つぎに私は契約している電話会社のホームページを開き、このような詐欺電話に出てしまった後の対策を調べてみた。だが、かかってきた電話番号を指定して着信拒否メッセージを発信し、自動的に通話を終了するサービスはあるけれども、それ以上の対策はなさそうだった。私は、おそらく大した効果は期待できないだろけれども、一応その処置を実行した。

 

それから私はGoogleの検索機能を利用して、かかってきた電話番号の追跡を試みた。それは18444...と続く番号で最初の1はアメリカの国番号を示していた。つまり、それは国際電話だったのである。続く84はメッセージの自動転送用の番号であることが判明した。企業の問い合わせ専用番号に使われる「Aの場合は1を、Bの場合は2を押して下さい」というヤツである。ここでうっかりと1を(たぶん他の何を押しても同じだろうが)押すと相手が出て、詐欺の勧誘が始まるのだ。しかもよりタチの悪いことに、この通話料金は通話を受けた方に請求が来るというのである。相手には料金の心配がまったくなく、いくらでも通話を引き伸ばしてカモを誘惑し続けることが可能なのである。あなたは長く話せば話すほど詐欺の被害確率を高め、仮に最終的に断ったとしても、多額の国際通話料の請求を逃れることはできないのである。たまたま私が参照した、アメリカ発の受信者負担による国際メッセージ転送サービスの解説は英文で書かれていた。おそらく日本文の情報もネット上のどこかにあると思うけれども、念のため老婆心(実は老爺ですが)ここに紹介して読者諸兄姉の御注意を喚起したいと願うしだいです。

 

なお、この詐欺電話の発信元がアメリカであるからといって、詐欺犯がアメリカにいるとは限らず、おそらく日本からアメリカを経由してこのサービスを悪用し、すべての費用をうっかり電話に出た被害者に被せ、金を騙し取ろうとしているものと思われる。以上、もしかしたら諸兄姉にはこの手の詐欺行為について既に充分な情報をお持ちであり、知らぬは世情に疎い私だけだったかもしれないとは思いつつ、あえて報告かたがたご注意をよびかける次第です。