主人公は31歳の会社員黒田みつ子。日頃は何でもそつなくこなす優等生で、社内での親友は先輩のノゾミさん。休日は趣味に費やし1人で過ごし、それなりに充実した独身生活を楽しんでいるが、一つ秘密を抱えている。2年くらい前から、頭の中にもう1人の自分「A」が存在していて、話しかけてくるのである。会社で嫌なことがあっても、「A」と話すうちに気が紛れる。そんな風に孤独とつき合ってきたある日、みつ子の前に年下の営業マン、多田が現れる。
みつ子は食玩の天ぷらを作って部屋に飾ったり、1人で温泉に行ったり。付き合いの幅は狭いが、プライベートは充実している人物で、のびのびとおひとりライフを楽しんで生きています。しかし多田との恋に落ちた時、初めて壁にぶつかる。マイ・ペースで自由な自分をどこか壊さないと、他人とは暮らせないことに気づきます。自分のことを“ミニお局”と卑下する主人公が、小さくまとまりかけていた自分の枠を広げていくプロセスがユーモアたっぷりに描かれていて楽しい作品でした。
みつ子はどんなに嫌なことがあっても、なるべく直視しないようにして生きているキャラクターです。「A」との対話の中でこぼれる本音が、主人公の内面を知る手がかりで、彼女をただ綺麗なだけでなく、複雑な心のひだを持った人物に造形していました。脇役も個性的で、たとえばみつ子の上司、澤田(片桐はいり)という人物は、有能で脇目も振らず仕事に邁進するバリキャリ、と言っても、定型的な嫌な女上司とは違う人間味あるタイプ。そんな人間関係の中で、女性同士の緩やかなつながりが描かれます。綿矢りさの小説を原作に、平凡な日常を非凡なドラマに変えた大九明子監督の佳編です。
監督・脚本 大九明子
助監督 成瀬朋一
撮影 中村夏葉
編集 米田博之
出演 のん 林遣都 臼田あさ美 片桐はいり
(2020/133分/日本)
18日から公開

