「最初の晩餐」

 

(2時間7分/日本)

監督・脚本・編集 常盤司郎

出演 染谷将太 戸田恵梨香 斎藤由貴 窪塚洋介

 

11月1日からテアトル梅田ほか全国公開

 

 

父を亡くした麟太郎(染谷将太)は、葬儀の為、故郷に帰って来た。カメラマンとして身を立てようとして2年目。様々な情報を遮断して、ひたすら仕事のことを考えて来たが、実家には過去につながる物が、タイムカプセルのように転がっている。何も考えまい、感じまいとする麟太郎の心の中に、幼い頃の母、姉、兄、そして必死に「新しい家族」を作ろうとしていた父親のことが、昨日のことのように蘇って来た。そんな中、通夜の準備があわただしく進んでいく。予定通りに仕出し料理が来ないことに苛立つ姉。目玉焼きをお皿に載せて通夜の客に出す母。見た目より実質的な部分を大切にしよう、と説いてきた父の遺言通り、奇妙な晩餐が幕を開ける。

 

 

本作は常盤司郎監督の長編デビュー作だ。外面より中身だと説く父親の行動を、一家の末っ子の視点から描いている。一家は母(斎藤由貴)アキコが15歳の息子を連れ、父(永瀬正敏)日登志が9歳の娘と7歳の息子(主人公・染谷)を連れて再婚した5人家族。多感な時期の子ども達は、食事の席でも簡単には打ち解けない。父と母が作る家庭料理、特に味噌汁の具でモメたりするシーンは寂しくもあり、苦笑も誘い心を

 

温める。食事をボイコットする兄姉の、意地の張り合いに距離を置いて見ている末っ子麟太郎。大人になった時もどこかそのまんま、冷めた

人間になっている麟太郎の心は思い出で解凍されていく。気になったのは脇役で出演する窪塚洋介。父親の病室に居るシーンでは、ほんとに寂しそうな顔をしていた。プライベート・フィルムの質感があり、好みの別れる作品だが、ヒューマン・ドラマにノスタルジーのスパイスが効いた1本だ。