夏草の賦 | ただぼんやり生きている

ただぼんやり生きている

ただなんとなく過ごしている日々の戯言~編み物と本と食べ物 その他

以前、宣言していた8月中の読書ノルマ、10日あまりオーバーして完了いたしました。

読み直しの中にも、新たな面白さが発見できました。


それだけしっかり読んでないということにもなりますが・・。


その中でも、司馬遼太郎の「夏草の賦」が読み応えありました。


以下、マニアックな話になりますので、興味のない方は読み飛ばしっちゃってくださいね。


「夏草の賦」は、戦国時代、四国統一まで行きかけた土佐の大名、長宗我部元親を主人公にした小説です。


司馬遼太郎が「竜馬が行く」を書いたときに、土佐の人物がリベラルなのは何故か?と考え、思い至ったのが彼の存在だったそうです。


元親は、一領具足という身分に関わりなく兵になれるシステムを構築し、式目を制定するなど土佐の民度をあげる功績を残しています。


この小説では、この元親を偏屈ものとして描いており、それが正室の目線でストーリー展開していきます。


彼の正室は、明智光秀の家臣の妹。


彼女は美濃中で評判になるほどの美人で、無鉄砲、好奇心旺盛に描かれていて、元親の行動に興味をもって


「俺のことを興味の対象にするな」


といわれても、「こんな面白いことやめられるか、これからもうんと見て楽しんでやる」と思ってしまう。


そんなところに共感してしまいます。


彼女の姪には春日局がいることや、ガラシャ夫人が近いことから考え出したキャラ設定なんでしょうが、あたっているような気がします。


結局、信長・秀吉の勢力によって四国統一も出来ず、秀吉に跪き、島津氏討伐では、大事な嫡男を戦死させてしまう。


その時期に正室も亡くしてしまい「自分の時代は終わった」と気落ちし、跡継ぎになんの指示も出さずに生涯を終えます。


そこらへんの悲しいところは、短くまとめてあるのがうれしいところです。


どなたの解説かは忘れましたが、司馬遼太郎の優しさとして、転げ落ちるように生涯を終えるような場合、簡略に済ませる傾向があるっていうのを読みましたが、まさしくそうですね。

夏草の賦 [新装版] 上 (文春文庫)/司馬 遼太郎
¥540
Amazon.co.jp

夏草の賦 [新装版] 下 (文春文庫)/司馬 遼太郎
¥540
Amazon.co.jp
これを読んだら、続けてこれも読みたくなりました。
新装版 戦雲の夢 (講談社文庫)/司馬 遼太郎
¥770
Amazon.co.jp

元親の息子、盛親が主人公の小説です。


この分だと秋は、司馬遼太郎づくしになりそうですね。