【成功の法則 松下幸之助はなぜ成功したのか】】江口克彦/PHP より
・会社でもそうやな。従業員にいろいろな人がいないとあかんわけや。
同じ人ばかりでは、全体として面白くない。
それに会社としても強くなれない。
・昔話で桃太郎というのがあるやろ。猿とキジと犬。みんな違うわね。
違うから、それぞれの役割が生まれ、違うから鬼退治ができたわけやね。それと同じように、会社にもいろんな人がいないとあかんな。
まあ、個性を持ったというか、特徴を持ったというか、そういう人の集まりにすることが大事といえるね。
・個性というものは、もともとひとつの、まあ、いわば拘束というものがないと発揮できんのや。
非常に矛盾したことを言うようやけど、個性は拘束なくしてありえないんやね。
障子と敷居鴨居の話でいえば、障子が障子でありうるのは、
敷居と鴨居という拘束があるからや。
障子が自由に開け閉めできるのは、上と下で挟まれておるからや。
個性というのも同じことや。
大工さんの道具箱でもそうやね。
大工道具というひとつの方向があって、そのうえで道具はさまざまである。カンナもあればトンカチもある。
ノコギリもあればノミもあるというようにね。
それぞれ個性を主張しとるわね。
・きみ、ええか。物事は、右か左か、どちらかひとつで考えたらあかんで。なんでもそうやけど、たいがい相矛盾する考え方があって、たいていの人はそのいずれかひとつの考え方で判断しようとする。けど、それは基本的にはよくないことや。
・まあ、人間は一つだけの物差しを使って考えた方が容易であるから、どうしてもそうなるわな。
二本の、あるいは三本の、ということになれば、複雑になるから、なるべく一本の物差しで明快に考えようとする。
しかし、わしの経験からして、物事そんな簡単なものではないよ。
たいていの場合、やり方を間違える。
基本方針と個性というのは、見方によれば相反する考え方といえるが、
そのいずれも否定すべきもんじゃないわな。
その両方を生かし活用するところに、会社というか組織が発展する秘訣があるんや。