加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』について考察するブログ -8ページ目
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」

『夜の現場撮影 2』


素人が撮影したために手ぶれがあり、しかも現場の明度を十分表現しきれていません。
加茂隆康弁護士が用意したナレーション用の原稿をご長男が読んでくれたのはいいのですが、
一本調子で説得力に欠けます。

加茂隆康弁護士は彼と対決策を協議しました。その結果、加茂隆康弁護士の知人であるプロカメラマンで映画監督をしているS氏に、撮影を依頼することにしました。

ナレーションも現場でのカメラワークを想定して、加茂隆康弁護士が書き直しました。
S氏は、「どうせなら売れない俳優を連れてくるから、彼にナレーター役をさせたらどうでしょうか」
と言います。

コスト・パフォーマンスはどうなのか、と思われるでしょう。
このケースは五〇〇〇万円を争う裁判です。被害者の過失を一〇%多くとられますと、五〇〇万円の減少になります。
五%で二五〇万円です。四〇~五〇万円のコストは目をつぶるしかありません。

わずか二〇分程度のDVDとはいえ、それが勝敗の雌雄を決するのです。
こうして、DVD制作スタッフの陣容がかたまりました。監督とカメラ担当はS氏、カメラ助手にS氏の部下の三名の男性、さらに大道具役として、加害車両と同一のオートバイを東京都内から調達してきて、千葉市の現場まで乗ってくる男性、ナレーターは無名の男性俳優、プロデューサー兼脚本家は加茂隆康弁護士です。

加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『夜の現場撮影』


夜の事故では、現場の明るさが問題になることがあります。
千葉県の幹線道路で、年輩の女性が自転車を引いて横断していたとき、一二五CCのオートバイにはねられ死亡しました。
夜一〇時ごろでした。

訴訟の中で、被告損保側の弁護士は次のように主張しました。
「現場は暗かった。バイクからは、横断歩行者は非常に認識しづらい状況にあった。
交通量の多いそういう場所をあえて横断した被害者には、五〇%の過失があり、その分を過失相殺するべきである」


この主張を裏付けるため、被告側は、事故発生時刻に撮影した写真を証拠として出してきました。

その写真を見る限り、確かに暗く見えます。現場が暗く、横断歩行者を認識しづらいというのは、運転者側に有利に働きます。
具体的には、運転者(加害者)側の過失が小さくなり、逆に被害者側の過失が大きくなります。

しかし、待てよ、と加茂隆康弁護士は思いました。
一般に夜の情景をふつうの露出で撮影しますと、肉眼で見たときより暗く写ります。カメラという機械を通すことによって、現実が歪められるのです。

遺族の方の話によれば、実際はこの写真より明るいといいます。加茂隆康弁護士も夜、現場に行ってみました。確かに明るい。約五〇メートルおきぐらいに街路灯がたっており、ガソリンスタンドの広告塔や、二四時間営業のコンビニから漏れる照明が、車道に反映しています。この明るさを肉眼で見た状態のままに収録する必要があります。

加茂隆康弁護士は当初、遺族であるご長男に、現場をビデオカメラで収録し、DVDにおとして見せていただきたいと伝えました。

でき上がったものを見ましたが、だめだったそうです。
何故だめなのかは次回お話します!

加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『ナレーションを練る』


裁判官に分かってもらうためには、ナレーション作りが重要です。
裁判官は、車の運転経験がないと考えておいた方が無難です。一般のドライバーからみますと、「車を運転しないのか」と思われるかもしれませんが、弁護士や検事、裁判官などには、車を運転しない人が多いのです。万一、人身事故を起こして禁錮以上の刑に処せられますと、たとえ執行猶予がついたとしても、法律家資格を失うからです。「あの事件はどうしたらいいだろうか」などと、歩きながら考える癖のある人は、車を運転するのは危険です。

実験映像を撮影しようと考えた場合には、弁護士が映画監督か脚本家になったつもりで、ナレーションの草稿を作る必要があります。
こちらが実験映像を出しますと、損保側も調査機関を使って、負けじと反証としての実験映像を出してきたりします。

これまで、損保側で撮ったDVDを何度も見せられてきましたが、はっきり言って下手です。カメラ視点がぐらぐら揺れて、見ていると気持ちが悪くなるような映像であったり、ナレーションが全く入っていなかったり、入っていたとしても、ぼそぼそ呟いているだけの、説得力に欠ける語り口調であったりするのがほとんどでした。これは、調査員はもとより、損保の査定担当者や代理人の弁護士に、脚本製作能力が一〇〇%欠落しているからです。

この能力は、経験豊富な弁護士だからといって、備わっているわけではありません。
損保側の数少ない泣きどころが、ここにあります。

車の運転操作を知らない裁判官にいかに分かってもらうか。

この視点から加茂隆康弁護士は、ナレーションの脚本を映画と同様に「スタート」から終了の「カット」まで、念入りに練り上げました。一言一句、言葉を選びます。

撮影にあたっては、カメラマンのカメラを構える位置、方向も指示しました。
そうしてでき上がった映像でしたが、どうも感心しません。説得力の弱い部分があります。加茂隆康弁護士はそれを指摘し、撮影スタッフ全員を加茂隆康自身の事務所に呼んで、どこをどう修正すべきか指示しました。

映画監督の黒澤明は、何かの映画の撮影で、登場人物の背景になる炎の燃え方が気に入らないので、撮り直しをさせたと聞いたことがあります。こっちは映画監督ではありませんが、実験映像が裁判官にどのような心証を与えるかと考えたとき、「まあいいや」という大雑把な妥協はしたくありません。
そういう妥協を弁護士がしてしまいますと、不利益を被るのは依頼人だからです。

加茂隆康弁護士のケースでも、再制作したDVDを東京地裁に提出したとこと、裁判官の心証が一〇〇%こちらに傾き、完全勝訴につながりました。

事実をより分かりやすく物語る能力。被害者代理人を務める弁護士は、この能力を身につける必要があります。

「事故は偽装だ。モラル・ハザード(保険金詐欺のリスクのことで、実務上は『保険金詐欺事案』と同意義で用いられる)だ」と言いたければ、その立証責任は損保側にあるとされたにもかかわらず、同種事案が起きるたびに、依然として損保は不払いを決め込みます。

被害者に対しては、「故意」を裏付ける具体的な理由や資料を全く示さないままにです。

最高裁の判例を無視したこういう態度は、コンプライアンスに反し、卑怯と言うほかはありません。
企業の社会的責任(CSR。コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ)をどう考えているのか、と問いたくなります。



加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『同一の車を使っての実験映像』


保険金詐欺呼ばわりされた被害者は、頭から火煙がのぼるほど怒りました。

「こうなったら、どんなに金をかけてでも、D損保の鼻をへし折ってやる」

そう彼はぶちまけました。

どのような実験映像を作るか、加茂隆康弁護士は綿密に計画をたてました。
実験には、事故車と同一のメルセデス・ベンツのステーションワゴンを調達してきます。
実際にその車を水没させることはできませんので、事故現場とよく似た砂利道を使って、
車を走らせます。

事故当時は運転者の男性しか乗っていませんでしたが、映像を撮影するため、カメラマンとナレーターを後部座席に座らせます。
さらに、運転者が車外に出たあと、車を停止させる人物を助手席に配しました。

実験車が一〇〇メートルくらい走ったところで、「ドライブ」のままフットブレーキを踏み、サイドブレーキを軽く引きます。車が停止します。運転者が外にとび出します。とび出したあと、二、三秒おいて、車が自動発進します。

スタントマンでなくても、普通のドライバーなら誰でも、たとえ女性であってもできることを証明するため、今度は運転手役を若い女性にやらせます。

この実験の一部始終をナレーション入りで収録しました。

加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『ビデオ撮影の技術 終』


用水路のそばの砂利が敷かれた畦道にメルセデス・ベンツのステーションワゴンを停止させ、運転者が小用足すため一時車から離れたところ、そのまま用水路に水没してしまったという事故があります。クリープ現象で、車が自動発進したからです。

事故はいくつかの偶然が折り重なって起きました。
運転していた男性は、トランスミッション・ギアを「ニュートラル」にしたつもりが「ドライブ」の状態になっていたと推測され、そのうえサイドブレーキの引き方が甘かったのです。それに加えて、この車は当日知人から借りた車であったため、被害車両の運転操作に不慣れだったという不運が重なりました。

幸い、事故車にはD損保に五〇〇万円の車両保険がついていました。
車の被害者(車の貸主)は、保険金五〇〇万円を請求します。しかし、損保側は支払いを拒否してきました。

「こんな事故が偶然に起きたとは考えがたい。借金の返済に首が回らなくなった被害者が、運転者と共謀して故意に車を水没させたのにちがいない」と。

こちらから東京地裁に提訴したこの事件で、D損保側の弁護士は次のように反論しました。

「運転者はギアが『ドライブ』の状態とは気づかず、フットブレーキを踏み、サイドブレーキを引いて外に出たあと、車は無人のまま動き出したなどと言っている。そんなことは物理的にありえない。『ドライブ』の状態で、サイドブレーキの引き方が甘ければ、車は即座に発進するわけだから、スタントマンのような特殊技能を備えている者でない限り、車から外にとび出すこと自体はできない。さらに車が動き始めたことを認識しないで外に出ることは不可能だ」と。

こういうことを言われますと、被害者としては事故の再現ビデオを作って、被告側損保の主張が誤りであることを証明する必要に迫られます。