加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』について考察するブログ -15ページ目
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『被害者の経済状態が決定要因』

自賠責保険金を受け取らないで、その分も一括して訴訟で請求した方が、遅延損害金などの計算上、
賠償金はふえることをご説明しました。
獲得する賠償金額を少しでもふやすことをめざすなら、この戦略が一番です。
しかし、もうひとつ配慮しなければならない事情があります。それはそのときの被害者(またはその遺族)がおかれた経済状態です。

もしいま、被害者が経済的に逼迫していて、一時金が欲しいという場合には、自賠責保険金を先取りした方が有益です。ご本人の当面の生活を維持することの方が大切だからです。
一年ぐらいの余裕をもって、訴訟が解決するまで賠償金が入らなくても構わない。
時間がかかってもよいから、遅延損害金まできっちり加算して払わせたい。そういう方は、自賠責保険金の被害者請求を見送るべきです。



加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『和解における「調整金」』

加茂隆康弁護士による調整金について書いていきますね。
裁判所の認定した賠償金が一億円の場合、判決なら遅延損害金は1000万円ですが、和解の場合には、認定額一億円の中に含まれている弁護士費用(たとえば5%相当とすると500万円)をさしひき、残り9500万円について、調整金を算出します。

(一億円-五〇〇万円)×〇・〇五×二年×五〇%=四七五万円

この四七五万円が和解の際の「調整金」です。
これはあくまでも一例にすぎず、どのケースでもこのように算定されるとは限りません。
自賠責保険から3000万円を先取りしていたときは、裁判所の認定損害額が7000万円ですから、
そこから弁護士費用(たとえば5%相当なら350万円)をさしひき、残り6650万円について、調整金を計算することになります。

(七〇〇〇万円-三五〇万円)×〇・〇五×二年×五〇%=三三二万五〇〇〇円

この三三二万五〇〇〇円が和解の際の調整金です。もちろんこれも一例にすぎません。
こうしてみていくと、3000万円の自賠責保険金の先取りの有無によって、和解でも、
「調整金」が前者なら475万円、後者なら三三二万円五〇〇〇円となり、一四二万五〇〇〇円の差が生じます。

被害者にとっては、無視できない金額です。
事故発生日からの経過年数が二年ではなくもっと長い場合には、この格差はさらに拡がります。
ただ、和解の際に「調整金」を加算するという運用を他庁でもやっているか、定かではありません。
少なくとも交通事故の専門部をもたない地方都市の裁判所では、このような扱いはしないのではないかと思います。

加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『和解における「調整金」』

前述の遅延損害金の差は、判決になった場合を想定してお話ししました。
訴訟の場では、被害感情がことさらい強い場合は別にして、和解が試みられます。
和解が成立しそうな場合、遅延損害金はどうなるか。
昔の裁判では、和解に際して遅延損害金(及び弁護士費用)は加算しないのが慣行でした。
しかし、日本の交通訴訟のリーディング・コート(リーダーシップをとる裁判所)といわれる東京地裁交通部では、10年ぐらい前(あるいはもう少し前)から扱いが変わってきました。
和解に際しても、判決の場合に想定される遅延損害金の約5%を「調整金」という名目で加算するようになったのです。

加茂隆康弁護士による調整金について詳しい事は、次の記事でご説明致します。

加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『年五%の遅延損害金の付加』

その理由は、遅延損害金とのかねあいです。
遅延損害金とは、賠償金の支払いが遅れたことによる利息のようなものです。
訴訟の場では、判決になれば、裁判所が正当だと認定した賠償金に対し、事故発生日を起算点として、
年5%の遅延損害金が加算されます。

たとえば、事故日から二年経過後に判決が出たと仮定してみましょう。 
裁判所が認定した賠償金額が一億円であれば、遅延損害金は、

一億円×0.05×2年=1000万円

となります。
このケースでも、もし3000万円を自賠責保険金から先取りしていますと、裁判所の定額は
7000万円になりますから、遅延損害金は、

7000万円×0.05×2年=700万円

となります。
つまり、前者と後者では、300万円も開きが出てしまうのです。
300万円といえば、人によっては年収に匹敵します。こんなにも、受けとれる金額に差が出てくるのなら、早まって自賠責保険金を受けとるんじゃなかったと思うでしょう。

厳密にいえば、先取りした自賠責保険金にも遅延損害金を付加してもらう道がないわけではありません。しかしそのためには、訴訟でその分の遅延損害金を請求しなければならず、この問題が新たな
火種(争点)となって、訴訟が紛糾します。そんなことになるくらいなら、自賠責から支給されるはずの金額もあえて事前には受けとらず、訴訟の場で一括して請求した方が、被害者にとっては得なのです。

加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『自賠責保険金を先取りするかしないか』

交通訴訟にはいろいろな戦略があります。
死亡事故や重度の後遺障害事案の場合、自賠責保険金を先取りする方がよいか、しない方がよいか、
という問題があります。

自賠責保険金は死亡事故なら原則3000万円、後遺障害事案なら、一級の場合、4000万円(要介護の場合)から3000万円(要介護ではない場合)となっています。
二級でも、3000万円(要介護の場合)から2950万円(要介護ではない場合)です。
たとえば被害者の総損害額が一億だとしましょう。3000万円を自賠責保険金から先に支給をうけますと、残りは7000万円です。
交通訴訟を提起する場合、この7000万円を請求額とするのが有利か、それとも自賠責保険金をあえてうけとらないで、一億円を請求額とする方が有利か、という問題です。

東京地裁交通部の元総括判事であった阿邊義典氏は、『新しい交通賠償論の胎動』(東京三弁護士会交通事故処理委員会編集、ぎょうせい)の中で、受けとれる自賠責保険金は被害者請求をして受けとってから訴訟を起こすように、と勧めています。裁判官の立場からすれば、未払いの賠償金があといくらなのかという点に争点を絞りたい、という思いがあるからでしょう。

しかし、被害者保護を第一に考えたとき、この見解には異論をもちます。