加茂隆康弁護士の著書レポート  女子年少者の逸失利益 | 加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』について考察するブログ
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』

第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」


『女子年少者の逸失利益』

児童や学生など、仕事についていない年少者が死亡した場合、将来の逸失利益の算定にあたっては、何を基礎収入とするか。
通常は、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金額を基礎することになっています。
全年齢平均賃金とは、年齢別平均賃金と区別して使われる用語で、すべての年齢層の平均賃金を集計したうえでの平均値ということです。

平成二〇年の賃金センサスによれば、男子の全年齢平均賃金が五五〇万三九〇〇円であるのに対し、女子のそれは三四九万九九〇〇円となっています。
これをベースに逸失利益を算定しますと、女性の方が男性より低くなってしまいます。単純にいえば、一つの事故で同年齢の少年と少女が同時に亡くなられた場合、少女の方が少年より生命の値段を安く算定されるということです。

実会社においては、女性の方が男性より常に収入が低いとは限りません。
年少者にとっては、前途洋洋たる未来が拡がっていたわけで、単に女性という理由だけで、男性の場合よりも逸失利益を低く評価されるというのは、不合理です。

このような理由から、年少の女性が亡くなられた場合の逸失利益の基礎収入は、女子労働者の全年齢平均賃金ではなく、男女を合算した全労働者の全年齢平均賃金で算定すべきではないかという意見が出されました。いま、裁判実務ではそれが一般的になっています。全労働者の全年齢平均賃金ですと、男子のそれと女子のそれのほぼ中間値になります。
そのようにしたとしても、まだ少女の方が、少年が死亡した場合よりは安くなってしまいます。男女間格差を完全には解消しきれていません。