今あんたは都会のド真ん中にいる。
周りには何が見える。
一級建築士も驚くどんな天候でも倒れないツンツン頭の兄ちゃんか。
あるいは、はだけた服を着てアピールする姉ちゃんかい。
ひょいと頭をあげれば一面に広がるキレイな青空。
夜は、あぁ星がキレイだね。
なんてロマンチックなもんなんて見えやしない。
どっかの電気屋の看板や、青の服を着て祖国を応援する大画面映像がまず目に飛び込んでくるだろう。
とりあえず高くすりゃ良いってもんでもないぜ。
まぁそんな景色にも俺は興奮するんだがな。
今日は東京にとどまらず世界的に超高層化が進む地球に新たに生をうけた子供のお話。

7月に入り暑さが本格化。
雨が降ると究極のベタつきが俺たちに抱き着く。
そろそろ満員電車の中で隣の親父を本気で殴りたくなる時期だろう。

そんな中俺は気になる記事を見つけた。


【10段チーズバーガー】


まったくもう。
10段までなら一応何段でも選べるという。
だがこの俺が9段以下を頼む理由があるだろうか。いや、ないだろう。
俺はそう簡単に一番おっきい10段バーガーに興味を持つ男の子だ。

さて友人2人をひきつれ俺たちは胸をはってロッテリアに入場した。
1つ990円の議題に対して割り勘が三票。
1人一個食べなくても10段がどんくらいなのか見れりゃいいって話。
さすがに1人ハンバーガー1個に990円は気がひけるよな。
330円ずつを寄せ集めて笑顔の姉ちゃんに差し出し、噂の主の到着を待った。

到着まで、大きさについて小学生の様にはしゃいで議論をする。
手をひろげて、こんくらいかな。

ついにプラスチックのお盆が俺たちの目の前に設置された。

約15×23の長方形の箱が1つ座っていた。

倒れやすいから寝かせているらしい。
はしゃいで席に着き、皆カメラを構える。
ブブゼラなんかよりやかましい謎のBGMを店で歌いながら箱をそっとあける。
紙に包まれた物体。

まったく焦らしやがる。
今度こそ。
と紙をはぐ。

紙に包まれた謎の物体。

まだ紙あるのか。
なるほど。ロッテリア史約40年の眠りから目覚めた大切なミイラってわけね。

最後の紙を全力ではいだ。

ただの謎の物体こんにちは。

もう5、6段目から形整えるのめんどくさくなりましたよバーガー。

そいつを俺たち3人はたかって貪った。
瞬殺。

味は是非自分で確認してくれ。
今のシーズンにぴったりの暑苦しさかな。
俺たちの目にはうつらないが奴らはきちんと動いている。
下から上、右から左。
あらゆる所をグルグルとね。

ソイツの名は気体。
吸うだけで体には何らかの影響があるからすこし厄介なヤツだ。
まぁプラスにもマイナスにもだけどね。
今日は俺のある気体との出会いのお話だ。

冬服をひっぱり出した次の日に夏服を着るという狂った天候の4月を過ぎ、頭がおかしくなる暑さのままGWが過ぎた。
そろそろこの夏をどのくらい省エネ、日陰で乗り切るかと構想を練りはじめる時期だろう。

そんな日、俺の位置は静かなお部屋。

向かい合った11ずつほどの机が6列並ぶ自習室だ。

休憩してから席につこうとした時、なにか異様な臭いが俺の休憩からの復帰を出迎えた。
座るとまたさらに臭いがきつくなる。

何者かの体臭という仮定はすぐにたった。

まずは周りには発信源は俺じゃないよアピールをするために一応自分の臭いを確認した後にあからさまにイヤな顔をして見せた。

異様な臭いの犯人を指名手配。
まずは両サイドのヤツを確認だ。
まぁそこそこ清潔な格好だから一応合格。

気体がいかにも臭そうな色がついて漂っていたのなら真っ先に発信源を突き止められるんだけどね。
理科でいうと無色、特有の臭いの犯人だ。
考え事をすると激しくペンを回すクセのある俺の手から下にペンが落ちた。

救出しようとかがんだ瞬間に前のヤツの足が目に飛び込んできた。
コイツだ。瞬時に確信に変われた。
ローファーをほうり出し、俺の陣地にまで進出していた黒地が少ししめったようなスニーカーソックス。
犯人を確認いたしました。
だが絶対に逮捕したくない相手。
触るのなんか絶対にゴメンだもの。
目の前の犯人をただ我慢しほっとく悔しさ。
早く帰ってくれることを願うしか俺はできなかった。

約25分後。
慣れてきたと思ったらさらに臭いが変化した。

下を覗くと黒かった足が肌色に変わっている。
脱ぎやがったか。
全てをさらけ出してやってくる犯人に対し、ただ最上級のイヤな顔しかできなかった。

顔面だけでも見てやろうと立ち上がり覗き込んだ。
胸には[FootBallClub]。
なるほど。この異臭が作成されるまでの過程は容易に想像できた。
顔面はというと不愉快な俺の顔とは対照的にあごをひょいと上にあげ幸せそうに天井を見て寝ていた。
あごががら空き。
俺はコイツの顔面に一発思い切りアッパーを食らわしてやりたかった。
自然の匂いなど微塵も感じない都会でも春の匂いはするもんだ。
春の訪れとともに女の子も一斉に冬眠から目覚める。
目のやり場に困るような露出度の高い服を着て飢えた男たちのナンパを待ってるのだ。
ルックスの良い子ならいいだろう。
だが春の訪れとともに熊のようなのも冬眠から起きることも覚えておいてほしい。


夜の都会を一人きりで歩いたことがあるだろうか。
夜の都会ともなると星の数ほどのカップルが動きはじめるのだ。
大小たくさんのカップルが幸せそうに歩いてる姿を横目に見ながら俺は堂々と都会のド真ん中を歩いてやる。
俺の耳には大好きなCarpenters。
素晴らしい英語の発音だ。
Walkmanを聞きながら一人で都会を堂々と歩いてる俺を可哀相と思わないでくれ。
そう思われた方が逆に悲しくなるしな。
だが一人きりで都会を歩くのも悪くないんだ。
誰かと歩くよりも一人の時の方が視野は広がるもんだ。
誰かと歩いてるときには見えなかったもんが目に次々と飛び込んでくるんだから。

今日はそんな俺の思わぬ発見のお話だ。

東京の駅はいちいち広くて人混みが多い。
だがその分、駅構内を歩くだけでも色んな発見がある。

俺が数多くの路線の看板の中からやっとの思いで自分の路線を見つけ改札へ向かおうとした時だった。
俺の目にカビゴンレベルのカップルが愛を確かめ合ってる姿が飛び込んできた。
ここは日本の首都、東京だ。もちろん様々なタイプのカップルがいてしかも夜の都会であることを考慮に入れた上で、抱き合い顔をうずめるくらいならまぁ許そう。

だが彼らは違った。
顔が恐ろしい距離まで接近していた。いや、もはや接触している。
そう都会のド真ん中でキスをしているのだ。しかも、しぼりたて牛乳なんかとは比べものにならないくらい恐ろしく濃厚なね。
それ以上はなにも聞かないでくれ。

Top of the world。
完全に彼らは彼らの世界を形成しその頂点で愛を確かめ合っていたようだ。人口2人の幸せな世界。
俺はその3人目になってしまった気分だった。
素敵なDangerous Zone。
俺は早く抜け出すために必死で顔を背けたがもう堂々と歩く気分にはなれなかった。

まったく、誰だポケモンの笛なんか吹いたヤツは。


なぁあんたも一人ぼっちで夜の都会にくり出して周りを見渡してみるといい。
思っても見なかったすげぇもんが見つかるかもな。