俺たちの目にはうつらないが奴らはきちんと動いている。
下から上、右から左。
あらゆる所をグルグルとね。

ソイツの名は気体。
吸うだけで体には何らかの影響があるからすこし厄介なヤツだ。
まぁプラスにもマイナスにもだけどね。
今日は俺のある気体との出会いのお話だ。

冬服をひっぱり出した次の日に夏服を着るという狂った天候の4月を過ぎ、頭がおかしくなる暑さのままGWが過ぎた。
そろそろこの夏をどのくらい省エネ、日陰で乗り切るかと構想を練りはじめる時期だろう。

そんな日、俺の位置は静かなお部屋。

向かい合った11ずつほどの机が6列並ぶ自習室だ。

休憩してから席につこうとした時、なにか異様な臭いが俺の休憩からの復帰を出迎えた。
座るとまたさらに臭いがきつくなる。

何者かの体臭という仮定はすぐにたった。

まずは周りには発信源は俺じゃないよアピールをするために一応自分の臭いを確認した後にあからさまにイヤな顔をして見せた。

異様な臭いの犯人を指名手配。
まずは両サイドのヤツを確認だ。
まぁそこそこ清潔な格好だから一応合格。

気体がいかにも臭そうな色がついて漂っていたのなら真っ先に発信源を突き止められるんだけどね。
理科でいうと無色、特有の臭いの犯人だ。
考え事をすると激しくペンを回すクセのある俺の手から下にペンが落ちた。

救出しようとかがんだ瞬間に前のヤツの足が目に飛び込んできた。
コイツだ。瞬時に確信に変われた。
ローファーをほうり出し、俺の陣地にまで進出していた黒地が少ししめったようなスニーカーソックス。
犯人を確認いたしました。
だが絶対に逮捕したくない相手。
触るのなんか絶対にゴメンだもの。
目の前の犯人をただ我慢しほっとく悔しさ。
早く帰ってくれることを願うしか俺はできなかった。

約25分後。
慣れてきたと思ったらさらに臭いが変化した。

下を覗くと黒かった足が肌色に変わっている。
脱ぎやがったか。
全てをさらけ出してやってくる犯人に対し、ただ最上級のイヤな顔しかできなかった。

顔面だけでも見てやろうと立ち上がり覗き込んだ。
胸には[FootBallClub]。
なるほど。この異臭が作成されるまでの過程は容易に想像できた。
顔面はというと不愉快な俺の顔とは対照的にあごをひょいと上にあげ幸せそうに天井を見て寝ていた。
あごががら空き。
俺はコイツの顔面に一発思い切りアッパーを食らわしてやりたかった。