1969年、千賀かほるさんのデビュー・シングル。オリコン4位を記録した大ヒット曲だ。私は小学校2年生だったはずだが、リアルタイムでこの歌は何となく記憶している。

 

 作詞の吉岡治さんは、美空ひばり「真赤な太陽」、石川さゆり「天城越え」、大川榮策「さざんかの宿」等の演歌・歌謡曲系、『悟空の大冒険』『光速エスパー』等のアニメ・特撮のテーマ曲など知名度の高い作品を多く書いている。

 

 作曲の河村利夫さんは、サックス吹きで作曲家。80歳を超えられても、ライブ活動をされていたようだ。

 

 曲はオリジナルも宏美盤も、キーはCメジャーで、ABA×2+BAコーダ。3回現れるサビに当たるBの部分は、歌詞も変わらずに繰り返される。

 

♪ 愛を失(な)くして、なにかを求めて

 さまよう、似たもの同士なのね

 

 この歌は、単純に失恋した者同士、という理解ではどうもしっくり来ない。この後の部分に、「♪ みんな孤独でつらい」という詞も出てくる。何かもう少し深い意味があるのでは、と思って検索したら、以下のブログがヒットした。

 

 

 筆者の方は、1969年という時代から、高度経済成長、70年安保、学生運動、抵抗する若者、フォークギター等をキーワードに挙げている。なるほど、そう考えると得心がいく部分がある。この歌が持つ独特の雰囲気は、やはり時代背景抜きには語れないであろう。

 

 この歌は、多くのカバー曲を歌い継いでいる島谷ひとみさんも2010年にカバーしている。その折りに、インタビューを受けているので、YouTubeと共にそちらもご紹介しておきたい。YouTubeも、この曲が世代間の架け橋になる、ちょっといい動画である。

 

 

 

 さて、宏美バージョンは『Dear Friends Ⅱ』に収録されている。アレンジは古川昌義さんで、ピアノ:島健、チェロ:柏木広樹、パーカッション:梯郁夫、ギター:古川昌義のジャズテイストの小洒落たサウンド(特にピアノ!)に、水野弘文さんのアコーディオンがノスタルジックな色彩を加える。

 

 BメロからAメロに戻る最後の「♪ 似たもの同士なの」の「ね」は、千賀盤も島谷盤もオーソドックスにドミナントが来る。ところが宏美盤の古川アレンジは意表をついたドッペルドミナントに当たるD7が鳴るところが小粋な感じだ。

 

 2コーラス後の長い間奏は、短3度上のE♭メジャーに転調する。この部分のチェロのピチカートとアコーディオンのユニゾンがまた美味しい。

 

 宏美さんの歌声は限りなく優しく温かい。音量は曲を通して控え目で、2コーラス後半のAのハモる部分など、真夜中らしい囁くような息遣いで歌われる。「♪ 似たもの同士なのね」の高音部分はファルセット。ハモリについては、宏美さんのライナーノーツでも、島谷さんのインタビュー記事でも触れられていた。リアルタイムで聴いた世代なら、皆ハモれる、と。良美さんとのデュオも是非実現していただきたい。

 

 

 宏美さんはライナーノーツに、「まだトラックダウン前の歌をうちのスタッフに聴いてもらったとき、イントロだけではどんな曲が出てくるのかと思ったけれど『湿度が上がりましたねぇ』と言われて、なんだかすごく嬉しくなっちゃった私です。」と書かれていた。

 

 宏美さんの歌の湿度は大いに結構だが、私の住む地方の今日の蒸し暑さはたまらなかった。光化学スモッグ注意報まで出た。梅雨入りは週末以降とのことだが、ジメジメの湿度はあまりありがたくない。😅💦

 

(2003.11.26 アルバム『Dear Friends Ⅱ』収録)