バリー・マニロウの3rd アルバム『Tryin' To Get The Feeling』(1975)に収められ、翌年全米No.1シングルとなった曲。原題は「I Write the Songs」で、1977年の秋のコンサートのアンコールで宏美さんが取り上げた。作詞作曲は、ブルース・ジョンストン。

 

 

 以前にも触れた通り、この3年目のコンサートでは、宏美さんはもう押しも押されもせぬ実力派シンガーとして素晴らしいパフォーマンスを披露している。そのアンコールにふさわしいスケールの大きなナンバーである。

 

 内容も宏美さんのコンサートを締め括るにピッタリである。原詩の大意は、「私は音楽。だから言葉を紡ぎメロディーを合わせ歌を書く」と言ったところだろうか。サビでは「♪ I write the songs〜」が繰り返され、「全世界を歌わせる歌を、愛や特別なことの歌を、少女を泣かせる歌を書くのだ」と続く。

 

 訳詞はしばたはつみさんで、これが名訳と言って良いだろう。「I write the songs」の部分を「私が(は)うたう」と訳し、そこに詩う、謳う、唄うという漢字を当てた。ご自分がこの歌を歌うために訳されたのであろう、だから同じシンガーとしての宏美さんが歌うとどハマりなのだ。

 

 原詩にある「I am music」という部分のコーラスは、このライブでも原詩のまま「Music !」と歌われている。まさに「音楽の申し子」たる宏美さんが、「私が歌うさまざまな歌の贈りものを、どうぞ聴いてください!」と歌っているように聴こえる。

 

 2コーラス終わりまでは、サビのフレーズはCメジャーで音域も低く、控え目に歌唱される。「♪ 心の中にためた言葉は〜」からの大サビで転調を繰り返し、リフレインの「♪ 私は 詩う 愛を〜」は一気に長3度上がってEメジャーに、繰り返される時はさらに1音上がってG♭メジャーになる。宏美さんの「凄まじいまでの美声」(眞峯隆義氏)が、思い切り解き放たれる。ラストの「♪ 命をー」のロングトーンは、上のD♭である。

 

 

 私はこの歌に感動して、バリー・マニロウのベスト盤を買った。78年のコンサートで歌われた「コパカバーナ」も入っていたが、もう一つ気づいたことがあった。この77年のライブで「歌の贈りもの」のリプライズの後に流れるちょっと不思議なエンディングの音楽も、バリーのヒット曲「恋はマジック」の引用であったということに、である。この曲はショパンの前奏曲(ハ短調、作品28-20)をベースにした曲でもある。

 

恋はマジック

 

 とまれ、この宏美さんのバリー・マニロウへの敬愛は、ずっと後年「Sincerely/Teach Me Tonight」での豪華競演(2006年)へと繋がることになるのだ。

 

(1977.12.20 アルバム『ラブ・コンサート パート1  新しい愛の出発』収録)