『Love』に収められているサンバ調のラテン・ナンバー。詞はさだまさしさん、作曲はまさしさんのサポートもしているパーカッショニストのキムチこと木村誠さん、アレンジはキーボーディストの川嶋フトシさん、という作家陣である。

 

 まず「ケセラ」というタイトルだが、漠然と「ケセラセラ」、なるようになる、という意味だと思い込んでいた。今回ブログで取り上げようと思って調べてみて、ことはそう単純ではなさそうなことに気づいた。

 

 「ケセラセラ」は、ドリス・デイが1956年に歌った楽曲で、映画『知りすぎていた男』の主題歌である。ところが、スペイン語では、“Que será, será”というのは非文法的であり、歴史的に用いられたこともないそうだ。専ら英語圏のみで使われたとか(Wikipedia より)。スペイン語で、Que será ?は、「どうなるだろうか?」の意の疑問文らしい。たしかに、歌詞内容を聞くと「なるようになる、ってなんか合わないなぁ」とは何となく思っていた。

 

 副題に「愛のためのいくつかの法則」とあり、「忘れないで」「思い出して」と、大切なこと(法則)をいくつもリマインドする内容になっている。なので、「どうなるだろうか?」というのも今ひとつピタリと来ない気もする。どなたかお詳しい方いらしたら、是非教えてください!

 

 曲の方に目を移そう。ライナーノーツの通り、パーカッショニストがお2人も参加され、バリバリのラテンのノリである。頭サビで「♪ ケセラ ケセラ/忘れないで〜」と、ノッケからイケイケなのだ。サビに戻る前のブリッジの部分、「♪ 求めても 求めたりず〜」からキメのリズムが入るところがとにかく楽しい。車の中でこの曲がかかると、私以外の家族も、自分の身体や車のどこかを、キメのリズムに合わせて叩いたりしている(笑)。最後サビを繰り返す2回目の時は、サンバにありがちな、バックの演奏がパーカッションだけになる部分も効果的である。いつぞやカラオケでこの曲を歌ったことがあるが、誰も知らない曲なのに皆ノリノリであった。

 

 リズムだけでなく、繰り返されるメロディーも大変覚えやすく、影響力、伝播力が強い。今日のブログはこの「ケセラ」にしよう、と決めて出勤するバスの中で書き始めた。すると、仕事中も気づくとこの曲が今日は一日中頭の中をグルグルと駆け巡っていた。

 

 音域的には、下のG♯〜真ん中のAと、とても狭く、また低い。Aも一瞬だけである。宏美さんが声を張り上げるフレーズもなければ、ファルセットを使う部分もない。宏美さんの喉に負担をかけずに、こんなに盛り上がる楽曲ができるのだ。しかも、つい身体が動いてしまう楽しいナンバーでありながら、さすがまさしさん!という歌詞は深い。これは今後の曲作りに示唆を与えているとも言えるのではないか。

 

 

 個人的に残念なのは、ブラスが入れば、キメの部分ももっともっとカッコ良かったのに、ということである。オルケスタ・デ・ラ・ルスみたいなサウンドに乗って宏美さんが歌ってくれたら、と私の夢想は果てしない。

 

(2013.6.19 アルバム『Love』収録)