『岩崎宏美のすべて』という2枚組のベストアルバムに収められた曲である。このアルバムは、全24曲中、ヒットシングル11曲、B面やアルバム曲4曲、そして未発表オリジナル9曲という、たいへん珍しい構成である。未発表オリジナルと言うと聞こえはいいが、アルバムやB面からは落選?した曲を、人気曲と抱き合わせで買ってもらおう、という企画とも取れる。しかし、私のように宏美さんが吹き込んだものなら全て欲しい!というような人間にとっては、この上なく嬉しい企画モノであった。

 

 当時私は、地元を離れて大学の宿舎で暮らしていた。学生街に「キャラバン」というちっちゃなレコード屋が一軒だけあり、いつもそこで宏美さんのレコードを予約していた。発売日の前日にその店に行くと、私の顔を見るなり「宏美ちゃんね❣️」と見るからに人の良さそうなおばちゃんがレコードを包んで、あれば予約特典と共に私に渡してくれたものだ。

 

 また、仮住まいということもあり、私がいつもツルんでいた仲間うちで、部屋にレコードプレーヤーがあったのは、Oというヤツ1人だった。レコードを手にするとすぐにOの部屋に行って、ステレオセットで宏美さんの新曲を味わいながらカセットテープに録音する、というのが常だった。もっとも、Oとは特に仲が良かったので、始終彼の部屋に入り浸っていたのだが。

 

 さて、曲に話を戻そう。このアルバムの未発表曲は、もちろん宏美さんの歌唱は素晴らしいし、悪くはないのだが、やはり今一つ何かに欠ける、という楽曲が多いように思う。そんな中で、とても気に入った歌が2曲あった。当時コンサートでも歌ってくれた「満潮」と、この「シャイニング・スカイ」である。この曲を最初に聴いた時真っ先に思ったのは、「八神純子っぽい!」ということだった。当時Oのイチオシは八神純子さんで、私も純子さんの曲ならひと通りわかるようになっていた。あとで考えて、「Another Day,Another Me」に似ていると気づいた。後年の「ナイス・メモリーズ」「AND I LOVE YOU 」にも通じる、お洒落なシャッフル、みたいな感じだ。参考までに「Another Day,Another Me」のYouTubeを貼り付けておこう。

 

 

 ビート感だけでなく、転調の仕方が似ているのも、雰囲気が近く感じる原因かもしれない。ポップスでは、短3度上下する転調が時折りみられる。この「シャイニング・スカイ」はB♭メジャーの曲であるが、イントロでいきなり2小節ずつB♭➡️D♭➡️Eと二度も短3度ずつ上がる。歌に入り、Bメロで他の調に傾いた後、「♪ 回り道もしたわ」でもD♭メジャーに着地する。純子さんの「Another Day,Another Me」は、Cメジャーの曲だが、近親調を経由して「♪ 明日になれば きっと〜」で、短3度下のAメジャーになるのだ。極め付けは、「シャイニング〜」のAメロに戻る前の「♪ ふれあう優しさに〜」のところと、「Another Day〜」の「♪ 光のシャワーに打たれそう〜」のところ。次の転調先のドミナントで音を伸ばしているのは、そっくり同じである。

 

 

 純子さんが、宏美さんの声をイメージして「みずいろの雨」を作曲した、という逸話は有名である。皆さん、その逆に、是非純子さんの声をイメージして、この「シャイニング・スカイ」を心の中で歌ってみていただきたい。きっとこの上なく、ピタリとくるはずである😉

 

(1981.12.5 アルバム『EXCEL ONE 岩崎宏美のすべて』収録)