宏美ファンの間で「ドレスお着替えソング」として人気の高い、ライブ限定ナンバーである。1982年のコンサートツアー、リサイタルで歌われていた。CDはおろか、レコードにもなっていない、知る人ぞ知る名曲である。

 

 ご存知ない方も多いと思われるので、YouTubeの動画を貼り付けておこう。

 

 

 詩の大まかなストーリーを書いておく。五番街の店にある白いドレスに憧れるタイピストの女性。何とかお金を貯めてドレスを買いに駆けつけた彼女に、店員たちは申し訳なさそうに、ドレスがたった今売れてしまったことを告げる。ところがそれは、彼女が憧れる紳士が彼女のために贈ったものと判る。彼女は憧れのドレスと彼の愛の、両方を手にしたのである。

 

 曲調は、ヨーロッパの民謡のような素朴なメロディーで、16小節のAメロとBメロを繰り返しながら、ストーリーが語られていく。貼り付けた動画は、宏美さんの当時のバックバンドのパイナップル・カンパニーと、コーラスのファニー・キャストによる演奏で、たいへん貴重な映像(1983年2月放映 CX「ザ・スター 岩崎宏美〜45回転で抱きしめて〜」)である。宏美さんが主人公のタイピスト、ファニー・キャストは店員、という役どころで歌っている。

 

 曲の構成は、至ってシンプルである。

 

A:宏美さん ♪ 五番街の この店にある〜

A:宏美さん ♪ 好きな人が いるのよ私〜

B:コーラス ♪ ほらあの娘 今日も来てるわ〜

A:宏美さん ♪ 誘われたの とうとう彼に〜

A:宏美さん ♪ 思い切って お金を貯めて〜

B:コーラス ♪ すみません 白いドレスは〜

A:コーラス ♪ ねえあの娘 泣いてたみたい〜

A:コーラス ♪ 白いドレス 買ってったのは〜

B:コーラス ♪ もう二度と この店へ来て〜

(半音上がる)

A:宏美さん ♪ 届いてたの 白いドレスが〜

 

 コーラスが長く続く部分で着替え、半音上がる部分で宏美さんが白い素敵なドレスで登場する、というイヤでも盛り上がる演出である。コンサートではこの後、ヒットメドレーが続く。

 

 この曲の成功に味をしめたのか、翌1983年の最後のリサイタルでは、「ドレスお着替えソング」第2弾として、「エアポートまで」が書き下ろされている。作詞・山川啓介、作曲・大野雄二である。(「五番街の白いドレス」の作家陣をご存知の方、いらしたら是非ご教示ください!m(_ _)m)なお、こちらも今なおこの曲目当てで、83年リサイタルのCDを購入する方がいるほどの人気曲である。ちなみにこちらのドレスは「黒」である。

 

 1982年12月、私は中学校時代からの友人を誘って宏美さんのコンサートに行った。終了後食事をしながら、どの曲が気に入ったか訊いてみた。彼女は迷わずこの「五番街の白いドレス」を挙げた。彼女は結婚を間近に控え、ウェディングドレスを手作りしていたこともあったようだ。彼女の結婚披露宴でも、私は弾き語りをプレゼントした。この年齢になっても、永くお付き合いを続けている大切な友人である。

 

(1982年 コンサートツアー曲)

 

【追記 2023.4.5】動画が見られなくなってしまっていたので、音源だけでも改めて貼り付けておきます。