宏美さんが「生き神様」と仰ぐさだまさしさん。そのさださんが、雪村いづみさんの歌手生活40周年を祝って贈った曲である。しかし、まるで宏美さんのために書き下ろされたかのように、歌詞がグッと心に迫る。

 

 

 この曲を初めて聴いたのは、2010年9月12日、相模女子大グリーンホールでのこと。初めて聴いたのに、なぜか懐かしさで涙が出てきた。この感じーーそう、宏美さんのデビューから9年間続いたリサイタル終盤で聴いた曲たちのイメージと、私の中で重なり合ったのだ。あの頃、スケールの大きな曲を堂々と歌い上げる宏美さんに、またドラマティックな曲を語るように聴かせる宏美さんに圧倒され続けていた私。この「虹〜Singer〜」には、当時のあの大曲たちにも負けないスケール感やドラマ性が備わっていたのだ。ストリングスとピアノのアレンジも秀逸。特に虹が消えた後に残る余韻のような後奏が素晴らしい。もちろん、この大きな詞と曲に一歩も引けを取らない、宏美さんの円熟した歌唱力・表現力は圧巻だ。

 

 「♪ 全てを手に入れたり 全て失くしたり/あなたまで ひきかえにして」という歌詞は、宏美さんの人生そのもののようで、痛ましく聴くのが辛いほどだ。

 

 「♪ 時々ふとラジオから 先に逝った友達の/なつかしい唄が 流れることがある 」という部分は、雪村さんにとっては美空ひばりさんや江利チエミさんのことであろう。宏美さんの目が潤んで見えることがあるのは、本田美奈子.さんを思っているのか。

 

 2コーラス目の最後で、「♪ I'm a singer あなたの空を/ひとときでも 私の色に/染められたら それでいい〜/(Hmmm〜)I'm a singer」と半音上がって盛り上がるところは、何度聴いても身震いがする。

 

 最後の「♪ 誰かのしあわせと 入れ違いに」という歌詞からは、本当にさだまさしという人の素晴らしい才能を感じて脱帽である。宏美さんは、彼女の歌を聴くわれわれにひとときの幸せを与えてくれて、振り返ると虹のように消えてしまう。短く美しい日本語で、そのことを豊かに表現しているのだ。

 

 『Dear Friends Box』で第52回日本レコード大賞企画賞を受賞した宏美さんが、テレビ放送で「虹~Singer~」を披露した。その折り、誰だか忘れたが、「今年のレコード大賞は、岩崎宏美の『虹〜Singer〜』によって、ようやく歌番組たり得た」というようなことを言っていた。まさに言い得て妙、だと思った。

 

 

 私はこの曲にぞっこん惚れ込み、「♪ I'm a singer  虹になりた〜い〜」などと、家でひとり熱唱していた(笑)。そうしたら、当時まだ小学生だった息子に、「♪ 会いませんか(ムリ←合いの手風)今日仕事だか〜ら〜」と、替え歌で返された😜💦

 

(2010.10.20 アルバム『Dear Friends Ⅴ』収録)