苦しみの根源 | 仏光さんの心の相談室

苦しみの根源

人の苦しみというのは何処から来るのでしょう?私は今の仕事を通して多くの人の苦しみを見たり聞いたりする機会が多いです。また何とかそのような人達のお役に立つようサポートをしていくのも私の仕事の一部と思っています。私は未だかつて何の苦しみも経験していない人に会ったことがありません。そういう私も今までの人生の中で多くの苦しみを体験してきたと思います。しかし他に苦しんでいる人のお話を聞かせて貰ったり実際に見たりする時、私の経験した苦しみなど大したことは無いなと思うこともあります。そして人として生まれて来て苦しみの全く無い人生などは無いと思うのですね。


人生を生きていく上でどうしても避けられない苦があります。それをお釈迦様は四苦八苦にまとめられました。生老病死は基本的な苦しみです。人は母親の細い産道を苦しい思いをしながらくぐり抜けてこの世に生まれてきます。そして生きていく中で子供の頃から必ず何らかの病を得ます。生きているだけで毎日少しづつ老いて行きます。いつしか若かった頃の体力は無くなり、肌にはしわやしみが浮き出てきます。その内、目は悪くなり歯も抜け落ちて食べ物が食べにくくなります。元気に動いていた手足は言う事を聞かなくなって体が思うように動かなくなります。そして寿命が尽きて誰にでも必ず死が平等に訪れます。


ただ産まれて生きているだけでもこれだけの基本的な苦があるのに、人生となると思い通りにならなかったり(求不得苦)、愛する人と死に別れたり生き別れたり(愛別離苦)、嫌な奴と会ったり(怨憎会苦)、自分の五感や心に受ける刺激で次から次と想念や情念が沸いてきて感情が乱れて泣いたり、怒ったり、悔しがったり、怨んだり、嫉妬したり、落ち込んだり(五蘊盛苦)と、もっと色々な苦があるわけです。でもこれは人間なら多かれ少なかれ誰でも経験する苦なのですね。このような苦が無い人は世の中には居ないのです。お釈迦様が言う「人生は苦である」というのは紛れも無い真理なのですね。


これらは人として生まれれば避けられないどうしようもない苦です。でも本当の人の苦はこのどうしようもない人間の苦を何とかしたいと思うところから生まれるのです。このどうしようもない苦を受け入れるのではなく、「何とかしたい」と思うところから本当の苦が始まるのですね。例えば母親が子供を亡くしたとします。これは大変な悲しみを伴います。でも、その子の死を受け入れずに「何とかしたい。受け入れられない。何とかなりませんか?」と思うところから本当の苦が始まるのです。この母親の苦は子供の死を受け入れた時にやっと鎮まってくれるのです。苦を受け入れなければ受け入れないで良いのですが、その苦しみが続くだけです。世の中を見回すとどうにもならないものを受け入れないで、何とかしようとしているところに本当の苦が生まれているのを見ることができます。


寿命で死ぬのに「死にたくない」と思うところに本当の苦が始まるのです。老いていくのに「何時までも若く居たい」と思うところに本当の苦が始まるのですね。病を得て病から逃れようとする時に本当の苦が始まります。逆に言えば人の苦というのはその苦を受け入れた時に消滅するのです。「死」というものを受け入れた時に死ぬ苦しみは消滅します。「老い」を受け入れた時に老いる苦しみは消滅します。病を得て「今は病んでいるから体が苦しいのだ」と病を受け入れると病から派生する無用な苦を避けることができます。例え身体は病んでも心まで病ます必要は無いのです。


このように人生の苦というものは、苦から逃れようとするともっと大きな苦が追いかけてきます。そして苦を受け入れた時にその苦が消滅するようになっているのです。心の奥底から受け入れると苦は消滅しますが、まあ消滅まで行かなくても大幅に苦を軽減することが出来るのです。どうしようもない事は嫌だけれども受け入れるしか方法はありません。何とかしようとするともっと多くの苦に苛まれるようになるのですね。だから今流行の占いとかスピリチュアルとかパワースポットでこういう苦を何とかフニャ~としようとするのはその人の自由ですが、真理からすれば残念ながらそういうことで苦が根源的に無くなる事はないのです。でも好きな人は気が済むまでやって居られたら良いと思いますよ。


私はどうしようもない事は考えないようになりました。考えなくなると心が無用に費やされる事がありません。結果どうしようもない事を嫌だ嫌だと思い悩む人生の時間が大変少なくなりました。人生では苦が減少するとその分、楽が増えます。だから私たちにできる事はどうしようもない苦を受け入れることができるだけの度量と智慧を自分に付ける努力をすることですね。坐禅は私にこの度量と智慧を与えてくれているような気がします。でもこれからも坐禅のトレーニングに精進していくしかありませんね。私の人生の苦を受け入れるのに、これで充分ということも無いような気がしますから。


合掌


仏光

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