欲望のなせる業

釈迦は説く

欲望を叶えたいと望んでいる人が、もし、上手く行くならば、彼は実に人間の欲する物を得て心に喜ぶ。

欲望を叶えたいと望み、貪欲の生じた人が、もしも欲望を果たす事ができなくなるならば、彼は、矢に居られたかのように、悩み苦しむ。人が田畑.、宅地、黄金、牛馬、婦女、その他色々の欲望をむさぼり求めると、苦しみが人につき従う。それ故に、常に良く気をつけて、舟のたまり水をくみ出すように、欲望を捨て去って、激しい流れをわたり、彼岸に至れ。　　　北川八郎著　ブッダの言葉百間百話より

私はこの通りの経験をしました。自分の欲望を叶えたい一心で色々一生懸命やって来て、その欲望が叶えられなかった時、本当に矢に射られたかのように悩み苦しみました。大きいのは人生で２回あったのですが、坐禅を始める前と坐禅をして来てからです。一回目は私が坐禅の修行を始める遠因になりました。二回目は坐禅をしてきて、まあまあ上手く人生が回りだしたかなと思った矢先です。坐禅をしてきてもなかなか自分の欲望というものは無くならないものですね。上手く人生が回りだしたから、自分に慢心ができたのでしょうね。

少欲知足とか色々分かっているはずなのに、欲望というものは本当になかなか無くならないものです。欲望を叶える為に頑張っている時は、それが欲望だとなかなか充分な自覚ができないのですね。でも、後で冷静に考えると、自分の欲望が出ていたんだなと思います。これは本当にお釈迦様が言うように一生懸命やってきたことが叶わないと苦しく辛いですね。

私の場合、二回とも偶然とは思えない事が起こって、私の欲望は叶いませんでした。｢こんな事はありえない。｣と思うことが起って欲望が叶わなかったのですね。これは本当に不思議でした。こういう時、｢天の誰かが私の人生を設計しているのではないか？｣と真剣に思えるほどです。ぞっとしますね。でも、結果としては自分の欲望が叶わなくて良かったと思えるのですね。一回目はこれがきっかけで、坐禅を始めました。それはそれで良かったのです。二回目の結果はまだ出ていませんが、このようなブログが書けているというだけでも良かったのかもしれません。これから本当の結果が出ると思います。

こんな事までお釈迦様が言う事を経験しなくても良いのに、経験してしまいました。だから本当にその意味が分かるのです。もちろん、一回目よりかは二回目の方が分かります。坐禅をしてきたから分かるのだと思います。でも、一回目よりかは二回目の方が内容が綺麗だっただけに巧妙に自分の欲望というものが分かりませんでしたね。今は｢やっぱりそうだったな｣と思えます。これだけ辛く苦しいのだから元は欲望だったのです。「これを私に分からせる為に、天はこのような事を仕組んだのかな？」と思えるくらいです。

「それ故に、常に良く気をつけて、舟のたまり水をくみ出すように、欲望を捨て去って、激しい流れをわたり、彼岸に至れ。」とお釈迦様は言っていますが、これが私には大変難しいのです。欲望を捨て去るというのは、本当に難しいですね。言っている事はよくよく分かるのですが、口で言うほど簡単なものではありませんね。私みたいに業深く生まれた人間は、少々坐禅をしていてもなかなか欲望を捨てられません。本当の幸せは平々凡々とした毎日の生活の中にある事は分かっているのです。でも、それでは私はつまらないのですね。だから色々欲望が頭をもたげるのです。

自分で自分の苦労を作っているようなものです。でも、二回とも天の助けがあって、欲望が叶わなかったようにも思えるのですね。そりゃその時は苦しく辛いですよ。でも後から｢それで良かったのだ｣と思えるようになるのです。でも、欲望を叶えようと頑張っている時は自分の事が分かりませんね。自分が見えないのです。そういう時はまさしく、「欲望を叶えたいと望んでいる人が、もし、上手く行くならば、彼は実に人間の欲する物を得て心に喜ぶ。」を求めているのですね。

何れにせよ、私はこういう痛い目に遭わないとなかなかお釈迦様が言う事を自分のものとして得る事が出来ません。損な性分だと思いますが、まあ、偉そうな事を言っていてもこれが私の生き方なのですね。ただ、このような人生の事件を通して分かった事は「欲望を離れると本当に楽になる。」という事です。憂う事もなくなるし、恐れる事もなくなります。人間の憂いや恐れは自分の欲望から出てきているのですね。痛い目に逢いながらも、これが分かっただけでも私はめっけものかも知れません。

合掌

仏光

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