心が人生を創る

どのような人でも自分の人生が幸せなものでありたいと願うものです。しかし、どれだけの人が心から自分の人生が幸せだと感じているでしょう。私は殆どの人が自分の人生を心から幸せだと感じていないように思います。しかし、これはある意味自然なことです。お釈迦様が言っている「人生は苦である。」という真理に則って人生とは苦労が絶えないものなのです。「生老病死」の四苦をはじめ、人間は生まれ持ったる煩悩の為に、物事をあるがままに見て感じ取ることができず、心に雲がかかって光が見えないのですね。放っておけば良い事は起こって当たり前で、悪いことは許せないと、思い通りにならない事にどんどん心を費やし、将来を不安に思って「苦労が絶えない」と愚痴りながら一生を終わるのです。

「人生は苦である」という真理なのだからしょうがないと思うのは早とちりです。なるほど放っておけば人生は苦で終わるのですが、だからこそ、その苦から逃れる努力をしなければならないのですね。でも何をどの様に努力したらいいのか分からないのが一般的なのです。放って置けば人生は苦なのですから、自分を変える以外にこの苦から逃れることはできないのですね。何を変えるかというと心を変えるのです。

普通私たちの心は煩悩、無明のお陰で悪しきものでいっぱいになっています。傲慢、嫉妬、悲しみ、執着、恨み、妬み、恐れ、不安・・・などなど、心は悪しきものでいっぱいになっているのです。心が悪しきものでいっぱいになっているのに、人生は幸せですという事には絶対にならないのですね。心に悪しきものが多ければ、やはりその人の人生には苦が付きまといます。

反対にもし心が慈愛、感謝、喜び、勇気・・・など良いもので満たされるとその人の人生は幸せなものになります。これはお釈迦様も言っている当たり前のことなのです。心が悪いもので満たされれば不幸になり、良いもので満たされれば幸せになる。これほど単純な真理はありませんね。だからお釈迦様は「正しい思いを持ち続け、自分で自分を叱咤激励して鍛えるのだ。そうすれば安楽な人生が開けていくであろう。」と言っておられるのです。だから幸せな人生を願うのなら、自分が今置かれている状況はともかく、正しく心を鍛え、出来るだけ悪しきものを心から追い出し、良いもので心を満たすように努力しなければならないのです。

ところが多くの人は自分の心の状態はともかく、幸せ、不幸せは自分を取り巻く環境、条件によって左右されると思っています。裕福な家庭に生まれ、高等教育を受けて様々な有力な人脈によって良い職業などに恵まれれば幸せになると思っているのですね。しかし、世界の歴史の中で偉人といわれる殆どの人は逆境の中から生まれ、没落者は金持ちの中から生まれています。

幸せは自分を取り巻く環境、条件の中には無いのです。本当の人生の幸せは良きもので満たされた自分の心が作り出すものなのですね。私は以前、この事に気付いて自分の心の中をできるだけ客観的に見てみました。すると悪しきものが出てくる、出てくる。まあ、自分でも嫌になるほど悪しきもので自分の心が満たされているわけです。良いものもあるのだけれども悪しきものの方が断然多い。「こりゃ幸せになるわけが無いな。」と思いましたね。だから幸せになりたいのなら自分の心を変える以外に道は無い。そこで老師に入門して禅の修行を始めたのですね。

不幸せな人生を送る人は、自分の心は放ったらかしておきながら、自分の周りの環境、条件に目を向け心を費やし、「こいつが悪い。ここが不十分」と不平不満に思ったり、ちょっとした事で優越感に浸っているからいつまで経っても苦から逃れることができないのです。また、自分の心を変えるのは大変だから、何か神秘的、超越的なものに頼って宇宙の果てから「フニャ～」と助けてもらうのを「まだか、まだか」と待っているのですね。こんなもの待っている間に自分の寿命が尽きますよ。

「心が悪いもので満たされれば不幸になり、良いもので満たされれば幸せになる。」という単純な真理があるわけですから、少しづつで良いから自分の心を良いもので満たすように変えていくしか幸せな人生を送る確実な方法が無いのですね。それでも寿命が迫ってくるので、出来るだけ確実に、出来るだけ効率よく自分の心を良きもので満たなければなりません。時間がかかるように見えても正しく禅の修行をするのが、最も近道だと自分の人生を振返ってしみじみ思っています。本当に悪しきものが自分の心から減っていって、良きものが増えていると思います。何故なら昔の自分と比べると今の自分の方が確実に幸せですから。大変ありがたいことです。良くも悪しくも自分の人生を創るのは自分の心なのですね。

合掌

仏光

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