8年3月18日(水)

 東京法律事務所の今泉義竜(多分弁護士であろう)という人は、「軍備のために生活が犠牲になる。これは『いつか来た道』ではないでしょうか」と言っている。この人は二つ誤りを言っている。解釈の違いではなく客観的な誤りである。司法試験は頭の良い人しか受からないと思うのだが、頭が良くても試験問題の先にある社会理解には、必ずしも正解が出せる思考訓練は受けていないという、実例か。

 第一の誤りは、軍備のために生活が犠牲になることは世界の通例であるとの認識に、至っていないという事である。日本の軍事費はGDPの2%になったとして、約11兆円である。11兆円ものお金があれば消費税はゼロにできて、国民生活はぐっと豊かになることは確かであろう。我々は軍備のために生活を犠牲にしていると、確かに言える。でもこれ日本だけの事か。アメリカの軍事費は来年約1兆ドルになると言われている。1ドル150円として実に150兆円である。これだけの金があればゾンビのように街をうろつく中毒者も一掃できるのではないか。中国の軍事費ははっきりしないが約40兆円と仮定して、それを福祉に回せば、中国人が世界で見せる非道徳性もだいぶ緩和されるのではないか。今泉は馬鹿だから軍備のための生活犠牲は日本だけの事のようにしか見えないのである。

 第二の誤りは、『いつか来た道』はアメリカと戦ったから生じたのであり、今回の軍拡はそのアメリカとより一層親しくなるためにしているという、全くもって原因を取り違えた歴史認識をしている事である。戦前は厳しい時代であったと思う。満州事変頃から日本とアメリカは中国を巡って鋭く対立するようになってしまった。アメリカは日本の中国政策を非難し、それに対抗して日本はますます大陸奥深くに侵攻する。国内ではパーマネント禁止とか「欲しがりません勝つまでは」とかのスローガンを国民に強制するようになる。まさに軍事費が国民福祉を圧迫していったと言えよう。そして日米戦となり、結果は原爆を食らう敗戦である。

 当時中国軍は弱く、イギリスはドイツに負けそうで(フランスは降伏していた)、ソ連とは中立条約を結んでいて、日本に勝てるのはアメリカだけであった。アメリカは世界最強の国(日本の国力の11倍)で、ヒットラーもアメリカとの戦争は避けていた。そんな国と戦争したのだから『いつか来た道』と、パブロフの犬的記憶が国民の脳裏に刻み込まれる事態になったのである。戦前の苦しみは全てアメリカと戦争したところから来ている。今回の軍拡は全く逆で、アメリカと同盟関係を強化する目的から、なされている事である。何が『いつか来た道』なのか、さっぱり分からない。分からないと言うより今泉は誤った歴史認識を、述べているのである。

 現在アメリカの国力はGDPからいうと日本の約7倍である。そしてここが重要なところだが、中国の公称GDPの約1.5倍である。中国のGDPは大盛されているとの評判だから、実際は倍から2.5倍くらいあるのではないか。つまり中国の国力は日本やロシアや韓国を積み重ねても、アメリカの国力に届くかどうかという所なのだ、という事実である。だから中国は今泉のような馬鹿(或いは売国奴と呼ぶべきか)に囁いて、何とかして日本をアメリカから離反させようと企んでいるのだ。そのために『いつか来た道』は効くのである。この言葉が発せられると日本人は、呪文にかかったように「そうだ軍拡反対」と、叫んでしまうのである。それくらい心身に浸み込んでいる。この呪術力から逃れるには日本近代史の勉強をして歴史の真実を知るしか術がない。アメリカと戦ったから日本は負けたのだ、今はそのアメリカとの同盟を強化しようとしている、と。