さてさて…
昨日の『光る君へ』の放送では
物語序盤の主役と言っても過言ではなかった、兼家パパの最期が描かれました
権力者兼家(かねいえ)の傲慢さと冷徹さ、そして内面の弱さを、段田安則(だんたやすのり)さんが見事に好演していました
これまで、大河ドラマで段田さんが演じられた役は
➀『秀吉』(竹中直人さん主演)→滝川一益(たきがわかずます)
②『真田丸』(堺雅人さん主演)→同じく滝川一益
上記二作品とも、織田信長の有力武将である 一益を演じていたのですが、何れも出演時期が短く、あまり印象が強くなかったのが正直な所でした
(これ以外に出演作品があったら申し訳ありませんが)
私の中で、歴史物に限った段田さんのイメージは、カリスマ武将に仕える有能な家臣役がお似合いという所であり
正直、『光る君へ』のキャスト発表で、兼家を演じられると知った際、『どの様な兼家になるのだろうか』
全く想像がつきませんでした
しかし、いざ、ドラマは始まると、第一回から見事に『権力のオニ』兼家パパの人間像を、見事に表現されており…
『流石だな』と話数を重ねる度に、驚かされた次第でした
北家九条流の師輔(もろすけ)の三男として生を受けた兼家は、正妻腹とは言え、長兄伊尹(これまさ)・次兄兼通(かねみち)に次ぐ
立ち位置で、なかなか出世するのは難しかったのですが…
➀長兄伊尹と提携して、長子超子(ちょうし)を冷泉帝に入内させて、居貞(いやさだ)始め三人親王の外祖父になる
②長兄亡き後は、次兄兼通と仁義なき権力闘争を繰り広げ、大きな挫折を経験する
③次兄亡き後は、復権して右大臣に昇進円融朝~花山朝期は、関白頼忠(よりただ)、左大臣源雅信(みなもとのまさのぶ)と共に政界三巨頭として政治をリードした
④次女詮子(せんこ)を円融帝(えんゆうてい)に入内させて、懐仁(やすひと)の外孫となるが、皇統両睨みという政治姿勢を円融帝に疑われ、娘詮子の中宮冊立を阻まれる
⑤円融を退位させて、花山帝の東宮に懐仁を立てることに成功花山を出家・退位させるという、前代未聞のクーデターにより
一条帝を即位させることに成功 詮子を皇太后に立坊、国母(こくも)とする
⑥一条帝の摂政として、他者の追随を許さない地位を獲得したが、その晩年には、政治への影響力行使を試みる、円融院(一条の父)との政治抗争を展開、院の反対を押し切って、春日大社への帝の行幸や、嫡男道隆(みちたか)の内大臣昇進を実現させる
⑦自身の末娘綏子(すいし)を東宮居貞に、孫娘定子(ていし)を一条帝に入内次代の外戚の座への布石を打つ
⑧息子達の出世を実現させるが、あまりにも強引な手法であった故、他の公卿達の反発を受ける
⑨その負の産物は、兼家の後継となった道隆に重く圧し掛かることになる
以上、簡単に兼家の政治活動について記したのですが、その生涯を俯瞰すると、必ずしも順調で終始した訳ではなく…
寧ろ、何度の挫折を潜り抜けて、五十七歳で漸く政治の頂きに昇り詰めたと言った方が、正鵠を得ていると思われます
しかし、彼の絶頂期は、僅か四年ばかりであり、自家の未来永劫に及ぶ繁栄の願望は…
彼の息子達に托されたのです
➀わが一族は、常に権力を目指さなければならぬ、それを絶えず頭に叩き込んでおけ
②家を繋ぐことこそが、わしの政(まつりごと)である わしの考えを理解・実践した者こそが、わが後継と思え
兼家の言葉(大意ですが)の中で、私が印象に残っていたのは、上記二つでしたが、面白いことに、劇中でこの言葉を発した場面は
道長との二人のシーンだけであったことは注目されますね
おそらく、汚れ役として用いると決めていた道兼(みちかね)は別として、後継と考えていた道隆にも
同じ様な内容を語っていたと考えられますが…
劇中で、兼家は道隆の言動や対処ぶりに、物足りなさを感じているシーンが何度かあり、嫡男としては及第点以上でありながらも
兼家はどこか道隆に不安を感じていたのかもしれません
道隆は父のやり方に、一切逆らうことはなく、後継となってからは、その手法を踏襲するのですが…
兼家と異なり、実績が乏しいまま、苦労もなく、摂政関白にまでなってしまった道隆には…
政や人事、後宮政策において、中関白家(なかのかんぱくけ)の利益を第一に考えたために
却って(一部の仲良し酒飲み友達を除き)、他の公卿達の反発を惹起する始末で、官位を引き上げてやった弟達すらも
距離を置く様になってしまいました
兼家のレベルまでとはいかなくても、(執政として)或る程度の実力を備えることを優先し、周囲との協調を大切にしつつ
徐々に自身の家の興隆を目指したならば…
道隆の病死で、中関白家の執政が短期間に終わったとしても
公卿総スカン的な形となり、坂道から転げ落ちるか如きの没落劇は、なかったかもしれませんね
その点、道長は兄の失敗を目の当たりにしており、関白七日在職で道兼が亡くなったという想定外の事態があったにせよ
姉詮子や中関白家に反感を持っていた、多くの公卿達の支持を受けた結果、甥伊周(これちか)との権力抗争に勝利出来たのでしょうね
執政となった道長は
➀時には父兼家ばりの強引な手法
②また時には、周囲との協調を旨とする穏健な手法
双方を巧妙に使い分けて政を牽引することになるのですが…
そうした所は、父の成功と兄の失敗という、肉親達の貴重な経験則から学び
後年の『望月の栄華』(もちづきのえいが)という成功へと、漕ぎつけたと思われます
最後にもう一度
段田さんの兼家役は、大河ドラマのみならず
今後間違いなく、彼の代表作になると思います
やはり、『オードリー』や『二人っ子』を始め、数多くのドラマで、段田さんを起用していた、大石静(おおいししずか)さんの
役者を見る目が凄いですね
本日は、ドラマを視た感想的な記事になってしまいました