10月20日(土)の午後3時から、2021年度10月の例会がオンラインで開催されました。今回は、中国の名門大学で長い間教鞭を取られ、日本語スピーチコンテストにおいて数多くの優勝者を育成してこられた、笈川幸司先生をお迎えしました。韓国、日本、中国など東アジアはもとより、東南アジア、北米、南米、ヨーロッパ、オセアニアなど世界各地から128名の先生方がご参加くださり、釜山日本語教師会が1995年に発足して以来、最も多い参加者数となりました。
第1部では、「作文の秘訣」についてご講義をしていただき、作文コンクールやスピーチコンテストのための作文の書き方とテクニックを教えていただきました。このような作文には型があり、4つのポイントを入れることで、どんな話もおもしろくなるということでした。まず、①ネガティブな話からスタートし、その後、②きっかけや出会いがあったものの順調にはいかず、しかし、③劇的な変化、ターニングポイントがあり、最後、④経験からわかったことと未来への決意でまとめる、というものです。
実際にこの型で書かれた中国の学生のスピーチを朗読してくださいました。ストーリーの展開と、気持ちが込められた笈川先生の素晴しい朗読で、学生が描いた世界に参加者のみなさんが引き込まれていました。ここで笈川先生が強調されていたことは、聞いている人の心を動かす作文やスピーチには情熱や魂が入っているということでした。つまり、型、あるいはテクニックを身につけた上で、誰にも負けないぐらい好きなことや興味をもっていることについて書くことが大切だということです。そして、作文指導はまさに、教師が、学生それぞれの魅力や好きなことを見つけるチャンスでもあるとおっしゃっていました。学生が情熱を持っていることを見つけることができたら、話もはずむでしょうし、作文の指導においてもより適切なコメントができそうですね。
第2部では質疑応答を行い、作文指導に関するものを中心に20近くの質問に詳しくお答えいただきました。まず、「書くことに対する学生のモチベーションを保つ秘訣」について、笈川先生は4行程度のコメントを書くことを勧めてくださいました。4行のうち3行はいいところを褒めて、最後の1行は間違っていたところや直してほしいところを伝えるのだそうです。間違えを指摘するものの、学生はたくさん褒められたことで自信を持ち、書くことに対するモチベーションが高められるのではないかということでした。
作文の添削の負担を減らす方法については、第1部のご講義で教えていただいた4つのポイントが入った型の習得が効果的だそうです。型を習得することによって、構成面での基本的な問題が減り、添削に時間がかからなくなるということでした。この型に関しては、段階的に学ぶことで、学生たちが一つ一つのポイントを消化できるようになり、その結果、作文執筆をスムーズに進められるそうです。
笈川先生のお話の中で出てきたキーワードはやさしさとテクニック、あるいは型であったと思います。指導においてやさしさは欠かせないものであり、学生に強制的に何かをさせるのではなく、やさしさで学生をまとめることが重要であるということでした。このやさしさはテクニックが8割であり、情熱が2割だそうです。つまり、指導において必要なテクニックや型を習得していることで、教師はそれほど注意を払うことなく、それぞれの状況で適切な対応を行うことができ、それ以外のところ、あるいは本当に重要な部分に気を配ることができるということです。ただし、テクニックは一番大事なものではなく、テクニックを支えている情熱や知識がより重要であるという、大変興味深いお話を聞かせていただきました。
笈川先生のやさしさと情熱のあふれるとても濃密なご講義でした。参加者のみなさんからは、笈川先生がお話される姿から、「聞き手を引きつける話し方や授業への情熱の重要性が感じられ、多くの気づきや学びがありました」、「自身の指導を振り返ることができました」といった感想が聞かれました。
釜山日本語教師会の例会がオンラインでの開催になり1年半が過ぎました。このように世界各国から参加してくださり、世界中の先生方をつなげる交流の場として、役割を果たせていることをうれしく思っております。来月の例会もぜひご参加ください!
10月担当 藤田・高橋・寺田






