終わらない終わり。



『一体いくつ壊せば気が済むんだ。』

壊すことに意味なんかない。
ただ、自分を保てなくなるだけ。

『これで何体目だ。』

数なんかいちいち数えていない。
抑、覚えていない。そんな些事に気を留めるだけ無駄だと思ったから。

『実験もこれで最期だな。』

最期?
始まってすら無いと思っていた。

実験?
何の実験だ?
これはただの仕事。
何処にでもありふれた至って普通の仕事。

『俺もこれで晴れて帰れる。こんな塵溜めなんかにずっと居れる神経を疑うね。』

コイツは…何を言っている?

『ったく、大した金にもならないのに。あの斡旋屋の口車に乗ったばかりに、』

コイツは…ナニヲイッテイル?

『まぁいい、急ぎ金が必要だったからな。』

コイツは…

次に目を覚ましたとき、辺りはいつもの静けさだけだった。

何だろう?
途轍もない不安に駆られる。


グチャ、


何か踏んだか?

グチャ、

暗くてはよく判らない。

グチャ、グチャ、グチャ、グチャ、

一つ歩を進める度にこの不快な音が後をついて来る。

確認する術はあった。

でも、確認するのが怖かった。

何事も無かったように進むのが精一杯で、意識しないで歩くのに集中した。

オレは、

『一体いくつ壊せば気が済むんだ。』

アイツの言葉が脳裏に浮かぶ。

『これで何体目だ。』

またボクは壊してしまったようだ。


暫く進むと古びた扉が現れた。
暫し考えたが開けることにした。

中には、小さな机に白い箱が置いてあった。
中には、


ーーーーーーーーーーーーー

『一体いくつ壊せば気が済むんだ。』


紛れもなく僕の声だった。

『これで何体目だ。』


何故僕の声が外界から聞こえるのか、不思議に思いつつも仕事をこなした。


そうか、これは、終わることのない物語なんだ。