こんばんは。
今回もフライトジャケット本特集です。
紹介するのは、1993年と1994年にかけて出版された、ワールドフォトプレスのコンバットマガジン別冊「MA-1マガジン」と「B-3」です。
1991年の「フライトジャケット大辞典」と1992年の「冒険者たちのクロージング」の後継と言える本です。
これら一連のシリーズは、実物フライトジャケットの紹介、戦時中の写真やエピソード、そしてリプロ品(主にリアルマッコイズ)の紹介で構成されるのが基本です。
なお、これら一連のシリーズの表紙は岡本博氏(当時リアルマッコイズ会長)が描いており、圧倒的な存在感と特別感、付加価値をもたらしています。
No.3 「MA-1マガジン」
ワールドフォトプレス
【概要】
表紙は岡本博氏にしては珍しい、ナイロンジャケットを着たパイロットです。他に映画「ハンター」のマックイーンくらいでしょうか。実物を知っている人ならではの皺の表現が見事ですね。
実物フライトジャケットについては、前半はA-1ジャケットからCWU-36/Pまでを幅広く紹介し、後半はバックペイントやパッチでデコレートされたA-2等レザージャケットの紹介となります。この当時でこれほど多種多様なフライトジャケットを集めるのは、かなり苦労したのではと思えるくらい、充実した内容です。
コットンジャケットもそつなく紹介されている。B-9は民生品だ。
リプロ品のページは少なく、内容的にもあっさりしたものとなっています。
しかし特記すべき事として、リアルマッコイズ初の実名復刻ナイロン製フライトジャケットとして、ALBERT TURNER社製MA-1最初期型のリリースが発表されています。今では当たり前になった復刻ジッパーも初めて採用されています。
当時は実物の方がはるかに高価だったので、これを古着屋に持ち込んだらどうなるのかと心配したものです。今はリプロ品の方が高価になってしまいましたが。
リアルマッコイズにとって重要なマイルストーンとなるこのMA-1であるが、余りにも退色し過ぎる欠点がある。
また「冒険者たちのクロージングⅡ」として、1940〜1950年代のフライトジャケットを着用した搭乗員達の写真と解説があります(飛行服発達史と重複する写真もある)。
この「MA-1マガジン」は、多くの人にフライトジャケットへの興味を持ってもらうことを意図しているようで、初心者にも広範、かつわかりやすい内容になっています。
【おすすめポイント】
私がこの本で最も気に入っているのは、「フライトジャケット・ブームの仕掛け人」による「辛口座談会」という企画です。
こういった当時の人たちの生の声を聞ける企画は、当時の空気やブームを牽引した人達の想いを感じ取れるのでとても好きですね。
参加者は、
・櫻井徹氏(当時リアルマッコイズ代表)
・小林亮一氏(現東洋エンタープライズ代表)
・窪田敬三氏(当時シュガーケーン営業部次長)
・菊月俊之氏(軍装品解説でも有名な軍事評論家)
・小島博明氏(フリーパタンナー)
・奥山雅巳氏(現「SHELBYS NO.20」のオーナー)
・早坂俊彦氏(調理師、コレクター)
という、錚々たる面々が、フライトジャケットの魅力を語り尽くします。
どこかの雑誌に、当時のブームを牽引した人たちを集めた座談会を企画してほしい。
「フライトジャケットは日本人の体に合わす必要はない。」激しく同意。
また、この本でしか見られない貴重な実物フライトジャケットが多数掲載されています。おそらく「辛口座談会」メンバーのコレクションかと思われます。
飛行服発達史と異なり、モデルが着用した写真が掲載されているのも良いですね。シープスキンの劣化が進んだ現在では、このような撮影はできません。
珍しいB-2ジャケットが2着も掲載。しかも状態も良い。右のつぎはぎだらけのホワイトB-3も凄まじい。
素晴らしいバックペイントも多数掲載。
この本にはバックペイントの描き方講座もあります。「こんなん絶対無理!」と思われるかもしれないが、やってみれば意外にうまく行くものです。
私はバズのB-6にタミヤの水性アクリルでバックペイントを書いた事がありますが、まあまあ上手く描けました。
ただ、派手なバックペイントのジャケットって、派手なタトゥーを入れて街中を歩くようなもので、私のような気が弱い人間には荷が重いです。
【注意・改善点】
前半の実物紹介についてですが、限られたページ数の中で広範なフライトジャケットを説明しようとしたため、一つ一つの写真がどうしても小さくなり、特徴がつかめなくなってしまっています。大きく見たい方は「飛行服発達史」がおすすめです。
また、リアルマッコイズの広告については、均質的なレイアウトと大人しい解説のため、あまり購買意欲が沸きません。まあ、今更ですが……。
冒険者たちのクロージングⅡについては、無駄に大きい写真とテーマのわからない構成のため、あまり読む気が起きません。読み飛ばした方も多かったのではないだろうか。
色々言いましたが、基本的には、あまり欠点の無い良書ですよ。
【入手方法】
アマゾンやヤフオクで2000円台から入手可能です。
あまり丈夫な作りの本ではないので、程度の良いものを選びたいです。
数も減ってきているので、欲しい方はお早めに。
No.4「B-3」
ワールドフォトプレス
【概要】
前作「MA-1マガジン」と異なり、実物フライトジャケットの紹介は少なめです。その代わり、フライトジャケットに絡めた戦史のエピソードが数点、更にフライトジャケットが登場する古いアメリカ映画を紹介する特集が加わりました。
本誌の始めの方で「A-2対決 ラフウェアとJ.A.ドゥボゥ」という特集もあります。この記事で台襟の有無やポケット位置の違いについて知った読者も多いと思います。
ポケット位置の違いは、私は実物を見るまでわかりませんでした。
「A-2対決」→「エピソード」→「映画」と、蘊蓄が増えるにつれ、徐々に読者の興奮は盛り上がっていき、「ザ・リアルマッコイズ・コレクション 1994」へと巧みに誘導されていきます。
ナイロンジャケットのエピソードは結構珍しい。他に菊月俊之氏や三嶋瑞穂氏(元グリーベレー)も素晴らしい記事を書いている。
レザージャケットが食傷気味だと、ナイロンジャケットが気になってくる。この記事を頼りにVHSを借りて観た方も多いのでは。
リアルマッコイズの広告は、文章、画像、レイアウトのいずれも素晴らしく、物欲を大いに刺激します。前作MA-1マガジンから進歩してます。
四種のA-2のうち、どれを買おうか迷った方も多いはず。
このワイルドチルドレンA-2は憧れの的であった。
B-15Dを買いに行ったが売れきれだったため、MA-1を買った。この当時のマッコイのナイロン生地は、色、触り心地、厚みなど大変特徴的であった。
それでもリアルマッコイズならではの「法外な価格」に尻込みするのが普通の感覚です。しかしその直後、「レザーマンたちの肖像」という、マッコイのレザージャケットと自らの肉体を一体化させた三人の野郎ども〈レザーマン〉が登場し、読者にトドメの洗脳を施すのです。
「仲間はA-2を僕の皮膚だと思ってるんじゃないかな」、「生活をアメリカの夢で満たしたいんだ」、「着倒しカラダを覚えさせる。ワークウェアだからね」……こんな事を言う若者、現代にいますか?
……非常に危険な流れです。こんな事されたら買わずにはいられなくなるでしょう。
私なんて色々買っちゃいましたよ。ローレンのMA-1、ペリーのA-2、マックイーンB-3、大脱走トラウザーズ、50年代セットインスウェット、A-3キャップ……どれだけ散財させられたことか!
なお、もっと高みにイキたい人のために、最後の方にカスタマイズ方法の記事がありますよ。
この本でリアルマッコイズにハマった人ってかなりいるんじゃないでしょうか? …という本です。
前作「MA-1マガジン」から格段の進歩を感じます。
【おすすめ】
まずは表紙をよく見ていただきたい。岡本博の筆致による、なんとも言えない構図のマックイーンに、赤い「B-3」のタイトル。まるでポスターのよう。中身の説明が一切書かれていないのに、これが何の本なのが想像できるところが凄い。この表紙だけで読む価値が保証されるような、圧倒的な説得力がある。この表紙だけで「買い」であります。
この本はマッコイ製品が買いたくなるように全体システムが最適化されています。決して誇張ではなく、本当にそうなのです。高いものを買わせたい意図がある方には、この本の構成は大いに参考になるのではないでしょうか(笑)。
構成だけでなく、写真やレイアウトもMA-1マガジンから格段の進歩が見られます。なんと言ってもリアルマッコイズ櫻井代表の文章がとにかく冴え渡っています。このクサい文章も旧マッコイを象徴する個性…魅力の一つと思います。
「一着の服から聞こえる英知の鼓動を伝えるため、最高最大の総力を結集した。さあ、貴方自身の身体で封じ込められた魂を感じてほしい。」
全体的に影が薄いのですが、表紙裏のバズリクソンズの広告はビンテージの雰囲気が出ていて素晴らしいです。素晴らしい撮影技術です。現在に至るまで、一番好きなバズの広告です。
【注意・改善点】
MA-1マガジン同様、丈夫な作りではないため、何回も読むとボロボロになっていきます。私の「B-3」もテープで修理しまくりです。他に注文を付ける部分はありません。素晴らしい本です。
【入手方法】
ヤフオクで2000円から、アマゾンだと5000円で出品されていました。数が減ってきているようなので、興味のある方はお早めに!
私個人として、「B-3」はフライトジャケットムック本の最高峰の一つと評価しています。
こんな本、二度と出ないでしょう。
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今回はとりあえずここまで。
これからもフライトジャケットに関連した本をたくさん紹介していきたいと思います。
最近、こういった本を見る事がなくなってしまったので寂しいですけどね。
それでは、次回もお楽しみに!