読み切り小説:また会う日まで | 勝利だギューちゃんの、果報は寝て待て

勝利だギューちゃんの、果報は寝て待て

変わらない今日と、変わろうとする明日を・・・

読み切りなので、全員に公開します。

 

☆また会う日まで

 

部屋の掃除をしていたら、一通の手紙を見つけた。
ハガキでも封書でもない。
中高生くらいの女の子がよくやる、便箋を折りたたんだ物だ。
(よく、考えるよな・・・)
高校時代の歴史の教科書に、挟まれていた。
高校時代までのものは、全て処分したが、歴史は好きなので、
これだけは、残していた・・・

 

広げてみる。
高校時代のクラスメイトだった女子からだ。
特に仲がいいわけではなかった。
なので、とっくに捨てたはずであった。

 

間違いない。確かに捨てた。
覚えている。

 

彼女は一度も、僕の家には来ていない。
卒業後は、一度も会っていない。


なので「彼女が来て、手紙を置いていく」というはずもない。

彼女からもらった手紙は、この一通だけ・・・
恐怖心があったが、好奇心が勝った。

僕はその手紙を開いてみた。

 

「親愛なる。村本くん。

 

お元気ですか?
今、この手紙を見て、驚いていると思います。
どうして、この手紙が村本くんの部屋にあったかって?
知りたい?
しょうがないな・・・
なら、教えてあげるね。

 

実はね。今私は、この世にいないの・・・
つまり、死んじゃったってことね。


天国だといいんだけど、悪いことしてきたから、多分地獄かな・・・
まあ、それでもいいんだけどね・・・

 

この手紙は、卒業式の日に、あなたの歴史の教科書に忍ばせておきました。
村本くんは、歴史が好きだったので、いつか気が付いてくれると信じています。

 

私が、よく入院をしていたのは知っているよね?
その時、お医者さんに言われたの・・・


「20歳まで、生きられないって・・・」

村本くんは、鈍感なので知らなかったと思うけど、
私は村本くんの事を、悪く思った事はなかった。


どうすれば信じてくれるのか・・・そればっかり考えてた・・・

でも、今なら私の事信じてくれるよね。

もし、信じてくれるなら、私に会いに来て・・・」

 

その手紙を読んだ後、彼女の家に向かった。
手紙に書かれていたので、行ってみた。
引っ越していなければだけど・・・

 

手紙に書かれていた住所に辿り着いた。
勇気を持って、呼び鈴をならす。


「はーい。どなた」
ドアが開き、中年のおばさんが顔をだす。
彼女のお母さんのようだ。

 

「あの、私は真耶さんのクラスメイトだった、村本と申します。」
「先程、部屋の掃除をしていたら、このような手紙が出てきましたので、
お伺いさせていただきました」
そう言って、手紙を渡す。

 

「わかったわ・・・あがってくださる?」
「ありがとうございます」
そういって部屋に通される。


そこには、真耶さんの仏壇があり、真耶さんの遺影が飾られていた。
にこやかにほほ笑んでいる。

 

「暑い所、ありがとうね」
「すいません・・・今になって・・・」
「いいのよ・・・真耶も喜んでいるわ」
僕は内心、ドッキリであってほしいと願った。
「わーい、騙された」と、笑いながら出てくれるのを願った。
でも、どうやら彼女の死は本当のようだ。

 

しばらくすると、おばさんんがお茶を持って現れた。
「あの子ね、いつもあなたの話ばかりしてたのよ」

信じられなかった。そんなはずはない・・・
どうしても、疑いの気持ちが晴れない・・
そんな僕の心を見抜いたのか・・・
おばさんは、ある物を持ってきた。
それは、スケッチブックだった。
それも、一冊ではなかった。

 

「開けてみて」
開いてみる。
そこには、僕の肖像だけが、書かれていた。
他の人の肖像画や、動物や、風景などはなかった。
僕だけの肖像画だけで、埋め尽くされていた。

 

「わかった・・・」
「はい」
僕は下を向き、何も言えなかった・・・

 

「これ、もらっていいですか・・・」
「もちろんよ」
僕は、帰路に就くことにした。
「また、会いにいらしてね。あの子も喜ぶから」

 

家に帰り、スケッチブックを見てみた。
(彼女は、僕の事を、こんな風にみてたのか・・・)

 

最後のスケッチブックの、最後のページにだけ、
肖像画ではなく、文字が一言だけ書かれていた。

それを読み、涙が止まらなかった・・・


「村本くん、幸せになってね」

 

Fin